第23話先輩と綾乃さん

「あんたか、うちの後輩をたぶらかそうとしてる女性って」


先輩…オレは別に誑かされてはいねぇっす…


放課後になったオレは、先輩と綾乃さん、椿と春華さんの全員で学校から近い人気のない敷地にやって来ていた。


「別に誑かしてないわよ。けど、これから先戦いは厳しくなるでしょ?

そして私は完璧な計画を思いついて、その計画に君達みたいに強い人が必要ってなっただけよ」


「完璧な計画?」


「名付けて!どんな強い敵も数で攻めたら勝てちゃう計画!」


そのまんまじゃん…


「あんた結構変な性格してるな」


「なんで!?」


ズバッと言う先輩に、どことなく翻弄されてる綾乃さん、さすが先輩、彩乃さんのペースにのまれないように話すのが上手い


「まぁいい、で?あんた刀は?」


「え?あぁいるわよ。出てらっしゃい」


すると、綾乃さんの腰辺りの服の裏から光った何かが飛び出し、先輩の前で人の姿に変わる。


「この子が私の可愛い相棒!奏多ちゃんよ!」


「ちゃんって言うな!!!」


女の子?

出てきた子は青いショートヘアにかなり小柄で随分と可愛らしいが目付きが若干鋭い変わった子が現れた。

服装も女物だしやっぱり女の子か?


「女同士の戦闘員か」


「僕は女じゃない!!れっきとした男だ!!!」


「「「「え!?」」」」


っことは何?生えてんの?男の象徴であるアレが…?


「なんかヤダ」


「なんかってなんだ!!!」


「アレで男って絶対に嘘よね」


「妾もそう思う」


ヒソヒソと話して本人には聞こえてないようだが、珍しく椿と春華の息も合っちゃってるし…


「どっちでもいい、オレはあんたが信用に足るのかどうか、それだけが知りたい」


「いいわよ、何をすれば信用してもらえる?」


え?何でもしてくれるの?マジで?


「じゃあ、ちょっとエッ「それ以上言うたら、そなたの口を縫い付けるぞ神威」チなのはマジで勘弁してください」


椿に止められたオレだが、既に縫い付けられたも同然じゃん…


「とりあえず今証明してくれとは言わねぇ、その内誰かと戦いになるだろう。その時に一緒に命を懸けてくれ。今はそれだけだ」


「なーんだ。ちょっと期待してくれても良かったのに」


先輩は真面目だなぁ、オレなら今すぐあんな事やこんな事を…って考えてる今椿の方からオレへ、すげぇ殺気を感じた。

オレいつか刺されるんじゃね?


そして先輩は、オレの肩に手を置いて、耳元で話しかけてくる。


「なんにせよ警戒はしておけ、何も無いにこした事はないが、だからと言って何かあってからでは遅いからな」


「了解っす」


「で?これからどうするのぉ?今後について話し合う?」


春華さんが案を出すと、先輩は興味無さげにきびすを返して駅へと歩き出す。


「いや、今日はもういい、オレ達はこれからいつも通り黒羽について情報集めだ」


この人いつもそんなことやってたの?


「妾達も帰ろうぞ、神威」


「え?あ、おう」


椿がオレの所まで歩み寄って、声をかけてくる。

今日は挨拶だけでお開きか、そーいや先輩は綾乃さんの実力試さなかったけどよかったのかな?


「私達も帰るわよ奏多ちゃん!!もうすぐ家にあなたの服が届く頃よ!!!」


「お前また女の子用の服を着せるつもりだろ!!!もう嫌だぞ!!少しぐらい男物の服を着させろ!!!」


「却下!!!だって可愛いんだもん」


「ちょっとは悩んで答えろやぁぁぁ!!!!」


奏多ってやつも可哀想に、好きで女装してた訳じゃなかったのか。

オレが2人を目で追ってると、椿がそれに気づいて声をかけてくる。


「どうかしたのか?」


「んーにゃ別に何でも、帰るか」


「じゃな」


その日はオレたちは特に何事もなく、家に帰ることになった。

翌日、オレはいつも通り椿と2人で学校に向かおうとしてたところ、後ろから接近してくる黒い軽の車が窓を開けて勢いよくオレ達に声をかけてくる。


「あぶなぁーーーーい!!!!」


「「!!?」」


振り返ると、綾乃さんがヘラヘラと笑ってオレ達の隣に車で並走してきた。


「へへっなんつって」


「いや、今のはマジでシャレにならんっす彩乃さん」


「そうじゃわ!心臓が飛び出すかと思うたぞ!!」


「ごめんごめん、そんな事より青春を謳歌している少年少女のお二人さん!!どう?送ってくよ?」


綾乃さんが、後部座席を親指で指しながらオレ達に乗り込むように誘ってくる。


「大学はいいんですか?」


「うん!今日は午後からだからね、そして奏多ちゃんと出かけるところだったからそのついでに」


「因みにその買い物は何を?」


「奏多ちゃんのお洋服」


力強い声と共に、グッとでも聞こえてきそうなサムズアップをオレ達にする綾乃さん、昨日も服買ったとか言ってなかったっけ?


「女性服は嫌だ…女性服は嫌だ…女性服は嫌だ…」


そうやって助手席に目を向けると、奏多が身体を丸めてブツブツと魂の抜けたような表情で呟いていた。

服だけなのだから、もう諦めればいいのに…というか既に女性服じゃね?

とりあえず、オレ達はご好意に甘えさせてもらって車に乗り込む、中はなんだか妙にいい匂いがした。

これが女の人の匂いってやつなのかな?


「さぁ!それじゃあまずはお2人さんの学校にレッツゴー!!!」


「「お…おー…」」


「女性服は嫌だぁ…」


まだ言ってらぁ


ブロロロと音を立てて走る綾乃さんの車は、学校に向かって順調に進み続ける。


「…?綾乃、何か聞こえないか?」


さっきまでブツブツと呟いていた奏多が、いきなり顔を上げて綾乃さんによく分からない事を聞きだした。


「え?何か?…聞こえる?」


「うん、何かゴォォォ…みたいな勢いのある音のような…」


その瞬間、何か巨大な物体がオレ達の乗ってる車を押し潰した。


「ぶっねぇ!!!なになに!?何事!!?」


「敵襲じゃ!!周りを警戒せい神威!!」


「敵襲は、一目瞭然ですけどね!!?」


オレは椿を担いで、奏多は綾乃さんを担いで一瞬で車を乗り捨て外に飛び出していた。

ほんと、あと一歩遅かったらペシャンコだった…


「o…oh…」


「ぁぁぁぁぁ!!!私の愛車のアイシャドウ32号がぁぁ!!!」


なんつー、ネーミングセンス…化粧品?


「お、今回は当たりっぽいな」


「だから言ったじゃん?オレの勘は当たるって」


「けど3回目でよーやくじゃねぇか」


綾乃さんの車の奥から現れたのは、2人組の男性だった。

1人は茶髪でウルフカット?とかいう髪型に鼻ピアスをつけた彩乃さんと同じくらいかな?の年齢の男と、もう1人は明らかに悪そうな風格でいかにも私は悪い人です。とでも言ってそうな黒髪の男だ。


「よー、お前さんら、どっちかが刀なんだろ?今の攻撃を抜け出したんだから言い逃れは出来ねぇぞ?」


「大人しくこいつの刀になりな、そしたら痛い思いはしなくて済むからよ」


まぁ、そーなるよね。

あれだけあからさまに狙ってきたら、刀と契っていると確信した上でオレ達を倒すか、刀を奪い取るかの二択だわな。


「一応訊くが、あんたらは刀の事情を知ってる…って事でいいんだよな?」


「今の会話から察するに、あの黒髪の男は妾達同様に刀…と見た方が良さそうじゃのう」


つまり、あの二人でキスしたことあるって事だよね?…それもうBL以外の何者でもないじゃん。


「ちょっちアンタら!!!どーしてくれんのよ?私のアイシャドウ23号をぶちこわしてくれちゃって!!!弁償しなさい弁償!!!2000万よ。頭揃えて支払ってもらうからね!!!」


「揃えるのは頭じゃなくて耳ね。あと軽自動車1つの弁償で、ぼろうとすんな」


いーや、ほんと今それいいます?ってか32号が23号になってるし


「刀を譲る気はねぇか、いいだろう。ならここで使い手をたたっ斬るだけだ」


「だから初めから、そーしとけっつったんだよ」


あの男達は、もうやる気満々だな。


「椿!」「奏多!」


「うむ!」「おう!」


オレ達は、即座にキスをして刀に変えた2人を手に、奴らを見やる。

すると、相手もいつの間にか刀に変身した黒髪の男を、その手に持ったウルフカット男が刀を構えていた。


「ねぇあんた達、もしかして他人に男同士のキスとか見られるの嫌いだったりする?」


綾乃さん…バッサリ訊くなぁ…


「たりめぇだ。こんな条件でもねぇ限り男同士とか有り得ねぇ」


まぁ、そーですよね。


「私の友達はそーゆーの好きな子沢山いるけ「今すぐその友達とは縁を切るべきだと思います」…なんで?」


絶対宜しくない妄想をするじゃないか、そんなの男として許せません。


さぁ、闘いを始めようか。

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