金色の夕立

うたたねプリン

偽りの仮面

学校からの帰り道。疲れて足を引きずるようにして帰っていた。夕暮れ時で辺りが少しずつ紅色に染まり、色が混ざってぼんやりとしていた。

学校ではいつも元気なワタシを演じてなければいけない。何があっても笑って、必ず友達に共感しなければいけない。

そんな毎日が窮屈だった。偽りの仮面を被って演技ごっこをする場所。それが学校。

陽が傾いている。ピチョンと腕に水が垂れる。

雨が降ってきそうだ。

急いで手持ちのビニール傘を開く。そしてまた歩く。

急に金平糖コンペイトウをこぼしたような音がした。ザァアと上から傘や地面のアスファルトに打ち付ける音。不意に傘を握りしめていた力が弱まり、傘が地面に落ちる。 

夕暮れの空から金平糖コンペイトウみたいな雨がふる。夕暮れに照らされて黄金色に輝いて、バケツに溜まったこの世の全ての幸せを空からひっくりがえしたような色。

金色の夕立。 

日暮れが照らして雨粒一つひとつが夕陽に反射してキラキラと輝く。

顔が濡れる。金色に満たされるように全身を雨に包まれる。何時間もつけていた偽りの仮面を溶かしていくようにゆっくり呪縛から開放されていく。

周りの人が私をちらりと見て眉をひそめる。

変な人かもしれない。でも、いい。誰にも共感されなくったっていい。

    学校牢獄から釈放されたのだから。

みんなに合わせなければいけない呪いを大人たちは誰も知らない。

だから皆、一人ひとり偽りの役を背負っている。

猫を被って毎日を過ごす。目立たないように周りから自分だけ浮かないように。平穏で何事もない日々を守ってジブンを作る。

その夕立が降った時、それが打ち砕かれた。

水は自由に変形できる。液体にも気体にも固体にも。まるで私達みたいだな。と思った。

雨が止んだ。色褪せた制服がびっしょりと濡れ、整えた前髪もペッタリと額に張り付いている。

ビニール傘を拾い上げてしっかりと縛った。

雨上がりの湿ったアスファルトを踏みしめながらゆっくりとした歩調で家に帰った。

    明日も私は、偽りの仮面を被る。





  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

金色の夕立 うたたねプリン @utatanepurin

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ