終幕


逃げている。




見るな。

見るな。

さっきから鬱陶しい。

あまりに邪魔だから、何人かは黙らせて、目が見えないようにした。

走っている。

赤い光が近づいてきた。

気持ち悪くなって、吐きそうになった。

さっき吐き出したせいで何も出なかった。

不意にうるさいサイレンが止んで、赤い光が追ってこなくなった。

きっと、わたしを見るのをやめたんだ。

よかった

よかった

走る足を緩めて、座り込んだ。

まだ気持ち悪かった。


だからチョコをポケットから出して、飲み込んだ。

一瞬の喉を通るあの不快感のあと、すぐに世界は色を取り戻した。

パステルだ。カラフルだ。


後ろから何か聞こえる。

知らない。興味がない。

歩き出そうとした瞬間、足が動かなくなって、そのまま、

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