第6話 総理、選外原発を自然エネルギー発電所に変えましょう!
「総理、選外原発の処理水を使って、揚水発電をしましょう!」達子は言った。
「そんな事ができるのかい?」
「太陽光発電でボンプを作動させて、処理水を山側に作ったダムに戻し、必要な時に揚水発電するのです。冷凍遮水壁は脆くて修復は困難を極めるし、大量の電気を使う。自己修復性コンクリート壁に替えて、原発をドームで囲いましょう。」
1年前、達子は、チームを集めて、言った。「凍土壁はいつか壊れて、修復しても、どうにもならなくなるわ。不完全の上塗りね。あなた達ならどうするかを"普通に考えて"。」
囲碁でも将棋でも"筋の良い手"が存在する。形が整っていて、攻守にバランスが取れている手だ。素人とプロでは筋の良い手が異なる。素人は粗だらけの5手、10手先を推測して、良さげな手を考える。それに対して、プロはひと目で筋の良い手を見極める。何手先を読んでいるとか、でなく、"プロが普通に考えると、こうなる"というものだ。達子が"普通に考えて"と言う時、「あなた達はプロ中のプロなのだから、私はあなた達を信じる。だから、"普通に考えて"、答えを導き出して!」という意味なのだ。女王樣にこう言われて、全能力が開花しない者がいるだろうか。
「凍土壁の内外にヒゲのような裂け目が多数広がっていっています。地球温暖化で気温、地温、降水温の変化が大きく、線状降水帯による降水量が極端に大きくなり、凍土壁の凍結と溶解の繰り返しが、位置保持を困難にさせ、元の設計から大きく崩れています。裂け目は凍土壁の作製時点から多少あったものですが、亀裂が厳しく、このままでは一挙に破壊します。次の震度6の地震に耐えられません。音波と地震波、衛星測量図から3D画像解析した結果です。」と、チームリーダーが達子に報告した。
「貴方がそう言うということは、緊急を要するということね。で、解決策は?」
「自己修復性3D網目状コンクリートで原発を6面とも覆います。」
「貴方がマサチューセッツ工科大学時代に発明した方法ね。地震を始め、地殻変動等の衝撃に強く、もし、亀裂が生じても自然に修復するという、しなやかに形態を保持するドーム状大型構築物。まさに、今回の原発を囲うには、うってつけの方法ね。」
「地下50mまで囲いますので、300億円ほどかかります。」
「止むを得ないわね。凍土壁を1000年保守、作り直しを繰り返していたら、1兆円でも足りないわ。さあ、開始しましょう!」
「総理、記者会見を開きましょう。シナリオはできています。」
達子はチームメンバーに告げた。
「さあ、開始しましょう。あなた達なら成し遂げられるわね。」
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