第4話 総理、エネルギーに1兆円投資しましょう!
「総理、エネルギーに1兆円投資しましょう!」 達子は事も無げに1兆円と言った。
「簡単に1兆円と言うなよ。」総理はびっくりして目が点になった。
「地球温暖化、炭素税。気温が上がると、国民がエアコンを使って、電気代と気温が上がり、国民の暮らしが貧しくなる。健康を維持するのが難しくなり、健康保険料も高くせざるを得ない。負のスパイラルです。今、安くて安全なエネルギーの開発を促進させ、開発技術と製品を世界に売って、税金収入で、国債を10兆円返しましょう。総理は、『10兆円返した総理』として歴史に刻まれますよ。」
「そんなことができるのかね?」
「総理、金融緩和を徐々に止めましょう!」、達子は言った。
「給料を上げながら物価上昇率2%を達成しなければいけない。」、総理は答えた。
「その前に、国民は疲弊しますよ。給料が上がらず、物価だけ上がる。金融緩和は円安を誘導しており、連鎖反応でほぼ全ての物価が上がり、物価抑制のため多額の税金をばらまき、悪循環です。また、日銀がTOPIX ETFを買い込んでいるため、いい加減な企業の株価が上がり、海外投資ファンドの利益になっているだけです。努力している企業も努力していない企業も同列に扱ったのでは、不公平であり、税金の無駄遣いです。TOPIX ETFを返して、その分を自然エネルギーに投資します。先ずは、審議会を開きましょう!」
「総理、始めます! 審議委員の人選は済んでいます。」
達子は小学生当時、世界中のあらゆる天才と呼ばれる人物や首脳に手紙を出して、世界中を飛び回っていた。満面の笑みを浮かべながら、彼らの母国語で、彼らの優れた業績や世界の問題について、ディスカッションした。彼女は、歴史、文化、社会の問題点について、インターネットで調べてあらゆることを記憶していた。ディスカッションは、議論と訳されるが、議論と言う型にはまったものではなかった。彼女のディスカッションは、「これはどう考えて、こうしたの? こうやったらどうなるの?」 興味が大きすぎて、夢中で彼らに話しかけていた。相手の威厳を損なわず、『私は貴方と貴方の国の素晴らしさに夢中なの。』と、言わんばかりだった。彼らは彼女に説明しながら、子供相手だと思わなかった。『自分と同格以上の相手がディスカッションしに来てくれた。』と。彼らは、彼女のファンになり、数々の問題についてアドバイスを求めるようになった。そして、彼女は自分が全般的な英才ギフテッドであることに気付いた、「私は、人類の役に立つべきだわ!」。
世界中の天才や首脳は、毎年、達子の誕生パーティに招かれていた、というよりも、いつにパーティが開かれるのかを問い合わせて、既にスケジュールを調整していた。パーティは達子の会社が経営するホテルを1週間貸し切り。達子へのプレゼントは禁止、もちろん滞在費は無料。皆がロビー、会議室、レストラン等で自由にディスカッションを繰り広げていた。学会での専門家同士の議論も重要だが、天才達のディスカッションは、専門外であっても途方もない発想が巻き起こす素晴らしい世界だ。もちろん、達子のコメントを聞きたくて、自分のプレゼンの順番が巡ってくるのを楽しみにして待っていた。女性画家は、達子に見せたくて最新の絵を持ってきた。達子は、「素晴らしいことがあったのね。人生に関わるような。」と言った。画家は、「そうなの。達子なら分かってくれると思っていたわ。実は、この人からプロポーズされたの。去年、達子のバースデーパーティで知り合ったわ。」と言って、彼と腕を組んだ。彼は、宇宙物理学者だ。「プロポーズの言葉は、何だったの?」 画家は、自慢そうに「『達子のバースデイパーティに、君を一生、エスコートさせてほしい。』と言われたの。それで、『二人で記念の場所で結婚式を挙げよう。』って答えたわ。」と、満面の笑みを浮かべた。達子は、「このパーティの最終日に、ここで二人の結婚式を開く栄誉を私にいただけるかしら?」と言った。画家と彼氏は、抱き合って喜んだ。達子は、育明に「頼むわね。二人の一生の思い出になるように!」と言った。育明は、『達子と自分の結婚式だったらと良いのになあ。』と思いつつ、『達子は高嶺の花だしなあ。』とも思った。
毎年、パーティには、達子の会社の社員達も大挙して押し掛けてくる。彼らは、その道のプロなのだが、天才達のディスカッションを聞きたい。あわよくば、自分のビジネスプランに天才達からアドバイスをもらえる。社員達は、天才の発想の原点が異なるのを感じ、触発されて、自分達よりも何段も上の発想をし始めていた。
このごろは、各国の首脳の人数が増えてきている。達子は、「世界の平和と進歩を目的にするならば、いつでも迎える。」と、言っている。育明のマネージメント、危機管理能力が光る。
達子は、健文に「おー願いがあるの。そのうちに話すわね。」と裏返った声で言った。健文は、「いーいよ。」と、裏返った声で答えたながら、内心、デートの誘いなのかと期待した。
戦争当事者の2国の代表が参加しており、口論を始めてしまった。今にも殴り合いになりそうな剣幕だ。達子は、皆に言った。「さあ、楽しいディべーティングの時間よ。司会は健文がお願いね。題目は、『戦争を続けることのメリットとデメリット』。今、この線から右にいる人はメリットチーム、左にいる人はデメリットチームね。戦争当事者の二人は、何らかの意味があって戦争しているのだからメリットのチームに入ってね。メンバーは、もうこれ以上は意見がなくなったり、主張するのが嫌になったら、自分の望むチームに移るのよ。」 当事者の二人は、勢い良く、「望むところだ。」と言ったものの、仲良く(?)、隣の席に座らせられて、『何かが違うぞ。』、と感じていた。ディべーティングは、紳士的に、論理的に、静かに行われた。戦争当事者の二人は、叫ぶのは禁止され、何を言っても天才達の反論にグーの音も出なかった。天才達は、徐々に、戦争のデメリット組に移っていった。戦争当事国がどれだけ疲弊して国民がどれだけ苦しみ、難民が何百万人出るか、全て具体的に数字で示された。第三者の利害の代理戦争になり、第三者の軍事産業の儲けがどれだけか、焼け野原になって、漁夫の利とばかりに他国から攻め込まれるという運命を数々の歴史的事実で明らかにされた。戦争当事者の二人だけが、戦争のメリットチームに残っていたが、とうとう欲求を抑えきれなくなって、我先にデメリットチームに移ってしまった。座った机の眼の前には、2国間の不可侵条約締結書が置かれていた。立会人に達子の署名があった。超大国の大統領や国連事務総長の署名より、達子の署名のずっしりとした重さを感じた2人は、見つめ合って、「本当に、これが結論なのだな。達子の署名はどんな条約よりも不可侵であり、世界を敵に回すことはできない。」と確認し合った。達子の笑顔の中に将来を見つめた洞察力を見た彼らは、真剣な面持ちでサインした。達子はふと思った、『人間同士がいがみ合っている間に、宇宙人が攻めてきたら人類を守れるのかしら。もし、地球が人類のわがままを許さなくなったら、人類は滅ぶしかないのか?』。
達子は健文に言った、「今のディべーティングの内容をまとめて、国連で演説してほしいの。戦争は食糧危機を進め、難民が世界であふれかえり、暴動が起こり、西欧、東欧、中近東、アフリカ、南米のいがみ合いが分裂を引き起こさせ、第三国の思う壺となって、第三次世界大戦を引き起こす。無駄なエネルギーの浪費は地球温暖化を進めて、人類の存続が危ぶまれる。国連事務総長と各国首脳には私から連絡を入れておくわ。『このディべーティングの内容を現在から未来への人類存続問題として厳しく受け止めて話し合うように。』と。全世界のメディアで生中継してもらう。今、やるべきだわ!」。
健文は、達子に聞いた、「頼みーって、まさか、国連での演説のことなの?」。 「Yes!」 裏返ったのか、達子の声は、声楽家としての能力もギフテッドであり、人間の可聴限界の高音で答えた。健文は『達子はディべーティングとその結果も予想してスムーズに事を運んでいた。そして、私の演説も。デートの誘いじゃなかったのか。』と残念な顔を隠せなかった。ただ、その後の達子の言葉に浮かれてしまった、「今度、一緒に隅田川の花火大会を見たいの。」。
これを育明は10m離れていたのに、聞いてしまった。いつも達子の声に耳をそばだてているので、健文が横にいるとなると、ついつい注意深く聞き取ってしまう。悔しいと思いながらも、『花火大会の雑踏の中で、達子を警備するのは至難の業ではない。しかも、健文が達子と手を繋ぎそうになったら割って入る。元々、俺が達子と腕を組んで歩けばいい。』などと、ニンマリしながら夢想してしまっていた。ふと、我に返り、段取りを考え始めた。ハッカー達に『花火大会当日のVIPや外国大使館員等の警備体制が邪魔にならないか?』を調べるよう頼まなければならない。
ハッカー達はホワイトハッカーなのだが、何年か前に、達子の興味を引きたい一心で、こぞって達子のパソコンに侵入して、「セキュリティホールをお知らせします。」と、達子のパソコン画面に表示してきた連中だ。彼等は有名なハッカーで、証拠を残さず、米国の国防総省ペンタゴン御自慢のセキュリティ最高ランクのハードディスクにある情報を取ってくるという遊びを競争している危ない連中で、ライバル同士であった。達子は面白がって、こともあろうに、彼等を社員にすることにした。実は、達子のパソコンは、ペンタゴンよりも3ランクくらい上のセキュリティにして、ホワイトハッカー達の能力を試していた。男性1人と女性1人がハッキングのテストを合格していたが、知力、体力、性格、組織との親和性等の総合力を試す必要があった。ハッカーが達子のパソコン画面に入れると、ハッカーのパソコン画面に「お疲れ様でした。あなたは、パスワードを入れて挑戦し、私と一緒に仕事をしたいですか?」と表示された。つまり、ハッカーのパソコンは、達子にハッキングされている。2回目以降は、セキュリティレベルが上がるだけでなく、ハッキング中に電話やドアホンが鳴り止まなくなり、宅急便が来たりしても、惑わされず、仕事を遂行できるか、もテストされていた。しかも、2人は、知らず知らずのうちに協力して人助けをする事ができるかという人間性の実地テストまでさせられていた。5回目のテストで、最後に、パスワードの入力画面になった。ハッカー達は「これは罠だ。1回でパスしなければいけない。3分以内に答えなければならない。」と考えた。既に二人は協力し合っていた。そして、「あなたは、また、パスワードを入れて挑戦し、私と一緒に仕事をしたいですか?」と表示されたのを思い出した。二人は、自分のパソコンのパスワードを入れた。ハッカーのパソコン画面に「お疲れ様でした。1週間後、オフィスに来てください。会えるのを楽しみにしています。」と表示された。
実は、育明もこのテストに内緒に参加していたが、1回目のハッキングに成功した後、達子に言われた、「育明のハッキング能力が優れているのは、テストしなくても分かっているわ。だから、育明にしかできないことをしてほしいの。私達が会社を立ち上げたときから、一緒にどれだけの人と会って、どれだけの書類を覚えてきた? 育明は、フォトリーディングの能力を活かして、彼等の顔、名前と連絡先を全て覚えているだけでなく、陰で彼等との太いパイプをずーっと継続して、いつでも彼らが協力してくれるようにしている。育明は、書類を探さなくても、直ぐに取り掛かれるよね。育明は、秘書以上の存在、仲間なのよ。信頼してるわ。」。育明は、涙をこらえながら、『達子に付いて行こう。』と再び思った。
ハッカー2人の初仕事は、検察庁からの依頼で「ハッキングで得た情報は非合法で裁判で使えないので、合法になるように犯罪会社の裏データをネットに情報流出させてほしい。全て、ハッキングした痕跡が残らないように、検察庁が依頼したことすらも痕跡を消してほしい。」というもので、たやすいアルバイトレベルの仕事だった。
育明は『隅田川の花火大会は、ホワイトハッカー達による事前調査情報と当日の周辺カメラ情報の解析が頼りだ。達子と健文の周りを変装した忍者隊が囲み、達子に気付かれずに警備を完璧にしよう。』と考えた。「いくら達子でも忍者隊の変装は見抜けまい。」とも育明は考えたが、実は、「何をやっても達子にはバレるのだろうなあ。」と目が泳いでいた。達子は育明に、「花火大会は社屋から見るからね。」と言った。警備の準備をする前から達子に読まれていた。そう言えば、達子は、健文に花火のことを話す時、半身に構えていた。育明の側から達子の唇の動きが分かるように話していた。達子は、「花火を見るとは言ったが、警備がしにくいところへ行く。」とは言わなかった。育明は、『また、俺の行動を達子に先読みされていた。情けないなあ。』と思った。その瞬間、達子は育明に「ありがとう。」と言った。その魔法の言葉は、育明の心に染み渡り、晴れ晴れとさせた。
達子は小学生後半になって、アメリカに渡り、飛び級を重ねた。13歳で大学生になった頃、同じ研究室に飛び級を重ねている3歳年上の男の子、晶元健文がいた。いつもニコニコしていてみんなの人気の的だった。彼女は彼と話すのが好きだった。部屋に飾ってある写真は、その頃に撮られたツーショットだ。ある日、廊下ですれ違いざま、足をつまづいて転びそうになった時、彼に抱きかかえられて助かった。と、同時に、声が裏返ってしまった。「あ、あ、あ、ありがとう。」 彼も裏返った声で「ど、ど、どういたしまして。」何かが変わったのだった。思春期だ。それからというもの、二人だけで話そうとすると、声が裏返ってしまうのだった。
達子は15歳で経営修士号MBAを取得し、17歳で経済学の博士号を取った。その時、同じ研究室の23歳の育明も博士号を取った。彼も飛び級組だったが、彼女の凄さを認めざるを得なかった。彼女は彼の研究にアドバイスしており、彼の博士論文の謝辞には彼女の名前が大きく記載されていた。6歳も年下で同期の研究者にアドバイスをもらったなどと、自尊心に関わることを自分の博士論文に記載することは有り得ない。でも、育明はそう書くことが誇りだった。それくらい達子は凄い人物なのだった。達子が会社を興すと言った時、育明は「秘書になる!」と言った。普通、博士になると自分の分野に進むものだ。育明には大学准教授としての誘いがあった。しかし、育明は達子の優れた才能にあこがれていたし、何よりも達子の近くにいたかった。声が裏返る健文には嫉妬を抱いていたが、二人の並外れた能力を考えると、とてもライバルになれそうにもなれず、せめて達子の秘書に落ち着いたという訳だ。
達子の博士論文のタイトルは、「技術開発投資のタイミングと規模のばらつきが世界経済パラダイムシフトに与える相対論的影響のカオスとフラクタルに関する研究」だった。要は、何事にもチャンスがあり、莫大な技術開発投資により、世界経済が大きくうねりを上げて時空を超えて行くが、その時の収益がどのような偏差を伴い、投資回収時期はいつなのか、どれだけの規模の投資を行えばよいのか、自己相似性の限界はどこまでなのか、等を36元方程式を相対論的に拡大編集して解説したもので、世界の投資のバイブルとも言える尺度となった。その後、彼女は研究から遠ざかり、実業家に進んだ。この論文にはたくさんの数式が並んでおり、例えば、「ある式の後に、これを解析すると、以下の式になり、、、」が続いている。囲碁でも将棋でも、型があり、細かい手順を考えなくても、このような陣形で戦うとこのような形になるというのが、プロである。ここで、困り果てたのは、この博士論文を提出された指導教官と大学側だ。教授会議で指導教官は「本当に理解できたのか? 本当に正しいのか? 本当に、、、なのか?」と、かわいそうに責められ続けた、「Yes!」と即答できなかったから。教授は半年かけて、やっとのことで理解できた。実は、21歳でノーベル賞を受賞し、ハーバード大学経済学部教授になった健文に陰で相談していた。そして、めでたく、博士論文が正式に受理された。この論文を真に理解できるプロは数少なく、世界中の様々な研究者による解説本が数多く出版され続けている。ただ、達子は誰でも手順を踏めば、詳しいことがわからなくても、現実世界で利用できるように解説本を一冊出版したので、あっという間に世界のバイブルになった。ノーベル賞候補者の選考委員会が、達子の業績を理解するため、助けを求めたのが、健文であった。達子はノーベル賞を断ったが、ノーベル財団からのたっての願いと健文の顔を立てるために受賞を受け入れ、金品は受け取らなかった。彼女は、今回のエネルギー投資審議委員会議長に健文をハーバード大学から呼ひ寄せた。彼女は、声が裏返ったときのことは考えなかったし、考えたくなかった、『だって会えるんだもん。』。
今回の新エネルギー審議会に先立って開かれたパーティーで健文の周りに女性が集まってくるのに、達子は離れたところから赤ら顔で直立不動で立っているのがやっとだった。近寄ろうとしたら、心臓が破裂しそうで、めまいがしそうだったので。それが、今度の審議会では直ぐ横に着席し、声が裏返らないかと心配していた。案の定、達子も健文も声が裏返った。二人は、数式が並ぶ会議を進行した。もちろん達子の方程式だ。しかし、裏返った声で、訳の分からない方程式を解き始めたのでは、何を言っているのか、他の審議委員は理解不能であった。休憩を挟んで、達子は総理補佐官業務の掛け持ちという言い訳で、別室からのバーチャル参加となって、二人の声は正常になり、物凄いスピードで審議会は終わった、、、。他の審議委員が理解できたかって? 実は、達子が作った、わかりやすい図がいくつも並べられており、三段論法で誰でも理解できるようにしてあった。
達子は健文と共に、日銀を説得した。ノーベル賞受賞者達の説明には日銀も刃が立たなかった。
衆議院予算委員会が開かれた。健文のプレゼンが終了した時、与野党から猛烈な反論があった、「赤字国債を減らさなければいけない時に、1兆円を投資するなどと、ふざけた話があるか。」。それに対して、健文は裏付けデータをもとに力強く論破していった。誰も反論ができなくなり、順調(?)に委員会を終了した。委員たちは困った、「党に帰って説明しきれるだろうか? いや、あの、わかりやすい図を見せれば、だれでもわかったような気になるよ。」。衆参本会議も同様だった。与野党共に、皆喜んだ、「ノーベル賞受賞者の健文が言うのだから、そうなのだろう。金融緩和をやっとソフトランディングできる。」と。どこまで行っても、『長い物には巻かれよ』ならぬ、『賢い者には従え』ということになった。皆は、すべて達子が書いた筋書きどおりとは、知らなかった。達子はどうかというと、「健文に任せておけば大丈夫。」と、ニコニコして見守っていた。
「総理、投資を始めますよ。」
達子と健文はディナーを楽しんでいた。裏返る声で。ただ、話の内容は1兆円投資の具体的な話ばかりだった。どうもそれが楽しいらしい。久しぶりに時間が取れたのだから、愛の語らいと行けばいいのに、そうならない、奥手の二人だった。というよりも、日本とアメリカで離れて忙しい二人が今後どうしたらいいのか、戸惑っていた。相手のことを思いすぎてしまって踏み出せない。だから仕事の話しかできない。さあて、愛の行方はどうなりますことやら。先が思いやられる、、、
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