第3話

私は家に帰ると、すぐに自室にこもって手紙を開けた。

玲奈の可愛らしい文字。そして所々、涙のあとで文字が滲んでいた。


『遺書』

彩衣へ

これは、私の遺書です。そして、私から彩衣にむけての最後の手紙です。

これを読んでいるということは、私はもうこの世界にはいないと思います。

最初に、彩衣を置いて先に死んでしまったことをどうか許してください。本当にごめんね。

そして、今までありがとう。

あとこれは言わせて、大好き。死んでからもずっと彩衣が大好きだよ。

だめだなー、話したいことがありすぎて、うまく書けないや。

私と彩衣が初めて会った時のこと覚えてる?

小学校2年生の頃だったよね。転校してきたばかりの時に、クラスに馴染めない私に彩衣が一番最初に話しかけてくれたんだよ。

あのときの私は、まだ町に来たばかりでどこに何があるかもわからなくて、彩衣が話しかけてくれなかったら、今も友達がいなくて一人だったと思う。ありがとう。

私にとっては、彩衣が最初に出来た唯一の友達だから、幸せになってね。

素敵な旦那さんをみつけて、可愛い赤ちゃんを産んで、世界で1番幸せな家庭を作ってね。

本当は彩衣のウエディングドレス姿も、可愛い赤ちゃんの姿も見たかったけど、私は天国で見守ってるね。

彩衣がおばあちゃんになって、天国に来たときは、私にいろんな話を聞かせてね。


玲奈より。



「・・・・・・・・・・」


手紙を読み終わって、戻ってきたこの世界にはもう玲奈はいないと気づいた私は、分かった。

もう、限界なんだ。

声も涙も全部、我慢するのは無理なんだと分かった。


「うわあああああああああああああああ」


私は泣いた。ベッドに頭をこすりつけて、ひたすらに大声で泣いた。

嬉しかった。

玲奈が私をこんなに思ってくれたこと。

私が思っていた以上に必要とされていたこと。

少しだけだろうけど、玲奈の役に立てていたこと。

私はそれが嬉しかった。

それと同時に、とても悲しくて苦しく感じた。

頭の中に浮かんでくる、玲奈の顔。

手紙を読み始めてから止まらない、玲奈の声。

次々に思い出される、玲奈との思い出。

一緒に遊んで、たくさん笑って、二人で泣いたいろんな思い出。

今も目の前にいるかのように、思いだす。

でも、そこにはもう、玲奈はいない。

今まで一緒にいた、玲奈はもういない。

玲奈はよく、私とは釣り合わないって言っていたけど、私の方が玲奈と釣り合わない。

玲奈がいなかったら、今の私はいない。

玲奈のおかげで、小学校からの10年間を生きてこれた。

ありがとう。本当にありがとう。

どれだけ感謝の言葉を言っても足りない。

どんだけ泣いても、どんなに叫んでも、もう玲奈には届かない。

そんなことが、私にとって、とても苦しくて、とても嬉しかった。

ずっと、おばあちゃんになるまで一緒にいたかった。

もっと、玲奈の思いを聞いておけばよかった。

でも、そんなことは玲奈にはもう伝えられない。何もしてあげれない。

泣いて、泣いて、泣き止んだときにはもう、窓の外は暗かった。

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