第20話 19 ウイスキーと白子とコロッケ
お弁当は、いつ作ってくれるのかなぁ。
いきなり、明日だったりして。
いやいや、期待なんかしてはいけない。
でも、いつかは、きっと・・・。
駄目だって、ここで喜んではいけない。
期待してはいけないんだ。
そんなことを自分に言い聞かせながら歩いていると、目の前に小さな古いアパートが見えた。
やばい! 今日はぺペンギンさん用のシングルモルトを買って帰らなければいけない日だ。
私は踵を返して、もと来た道へ戻り、小さな町の小さな酒屋さんへウイスキーを買いに行った。
部屋に辿り着いたのは、いつもより一時間遅い帰宅、となってしまった。
「おう、おかえり、残業か?」
「え、いや、その、これを」
と言いながら、小さな袋に入った小さなボトルを片手で持ち上げた。
「おう、悪いね、買い忘れて酒屋まで戻ってくれたんや。ありがとさん、やで」
「いえいえ」
「てか、お前、嬉しそう?」
「えーと、冷蔵庫には、この前に買っておいた白子があったと思うんだけど」
「おおー、白子ね、あれ美味かったな」
なんとかやり過ごせたと思っていたが、
「で、遼太郎君。顔の筋肉が緩んで見えるのは何故?」
うーん、このペンギンには何処までも黙秘を通せないように思える。
「黙ってんと、一緒に飯、食わへん? お前のコロッケは冷蔵庫に残ってるやろ?」
「ええ、はいはい、今から焼き直します」
そう言うと私はフライパンをガスコンロの上に置き、火を入れた。
電子レンジみたいな高級品などない。
然し、コロッケはフライパンで焼き直した方が、程よく油が抜けて美味しい。
でも? もし? 葉子さんが夜のお弁当を作ってくれたなら?
葉子さんが職場でやっているように電子レンジで温めてみるのも良いかも?
いかんいかん、私! 何を考えているのだ。
「で、お前、いつまで笑うてんの?
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