第18話 17 甘いもの



 ぺペンギンさんに昨日の夜も怒鳴られた。

なのに、どうして、楽しいんだろう?

これまで怒られるのが楽しいなんて思った事はない。

当然と言えば当然なのだが、怒られて楽しい人なんかいないだろう。


 朝は珈琲を飲んでから出勤する事にしている。

今までは、忙しいとかじゃなくて朝御飯を胃が受け付けないから食べなかった。

最近は珈琲くらいは飲んで出掛ける。

ぺペンギンさんのお勧めで牛乳を混ぜて飲んでいる。


「お砂糖とかは?」


 とぺペンギンさんに聞くと


「ワイ、甘いもん、あんまりやねん。何んかな、頭がボケてくるのよ。疲れてる時には甘いもんがええ、言うけどな、それって頭がボケてくるから、何やどうでもええようになってくるからちゃうかな、って思えるくらい頭が素ボケになって来よるんよ」


 このペンギンは自分の趣味で喋っている、と思った。

とにかくドアを開ける。


「行ってきます」


「早よ、お帰りやす」


 職場に着くと、エプロンを掛けて、バンダナで頭を包む。


「おはようございます」


 と言えば、みんなが、


「おはよう」


 と答えてくれる。


 先輩後輩はあっても地位は一列同等、アルバイトだ。

だから、みんな、仲良し、に見えるだけかもしれない。


 いつか、葉子さんが言っていた。


「そうでもないわよ、人ってね、絶対に合う合わない、があるじゃない? でもまぁ此処は、先輩の苛めもないし、表面上は穏やかだから、まし、な方ね」


 そう言えば、葉子さんに対する陰口を聞いたことがある。

若いのに離婚して子持ち。

悪いことなのか?


 可哀想に変な男に引っ掛かったとか、一人で子供を育ててとか、いろいろ。

憐れみをかけているようで、甘い蜜を舐めているようにも感じられる時がある。

甘い蜜。


 そう言えば、ぺペンギンさんは甘いものが嫌いだと言っていたことを思い出す。

甘いもの、私も嫌いになりそうかな?

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