第128話 レッドキャップの袋

 ニャンニャンに魔法円について(オレ的には魔法陣の方が耳馴染みがあるのだが……)ある程度教えてもらった後、【秘密の部屋】で少し休憩をすることにする。




「ニャンニャン、お腹すいてる? お茶とクッキーならすぐ出せるけど――」




 そう言いながら扉を開き中に入ろうとした瞬間、ニャンニャンにズボンの裾を掴まれ中に入るのを止められる。




「――ケイさま! 部屋の中から血の匂いがするのです!」




「えっ? 血? …………あっ! そうだった!」




 ホルト邸の捜査に行ったりなんだりですっかり忘れていたのだが、レッドキャップの腕を回収していた事を思い出し、ニャンニャンにもその事を伝える。




「そうだったのですね……あ、あのレッドキャップの腕を…………人族がどうこう出来る相手ではないはずなのですが……で、でもケイさまだし……」




 良く聞こえなかったが、ニャンニャンは何か独り言を呟きながら首を傾げたり頷いたりした後、こちらに顔を向けてまた話し始める。




「ケイさま! そうなると近日中にまたレッドキャップが来るかもしれないのです」




 嫌な予感を覚えつつもニャンニャンにさらに話を聞くと、腕を生やす手段はないわけではないのだが難易度がかなり高いため、欠損した部分がある場合はつなぐ方法を選ぶ方が難易度が下がるらしい。それでその腕が腐る前に、どうにかして取り返しに来るのではという事だった。




「うわ~面倒くさ~! また戦闘になるのかな……? 騎士団は全然相手にならなかったし、その時はまたオレが対処するしかないか……」




「大丈夫なのです! 今度はあたちもいるのです」




「……ありがとう! 早く片付いてのんびり出来るといいんだけど……」




 憂鬱な気持ちを奮い立たせ、レッドキャップの腕と落ちていた床を浄化し、その緑の腕を拾い上げる。




「袋を掴んでいるのです」




「そうそう! この袋から煙幕とか回復ポーションを出してたから、そういうのが入っているのかも」




 袋から手を引きはがし適当な木箱に入れて、袋の中身を覗いてみる。




「えっ? 何これ?」




「何か変なものが入っていたのです?」




 袋の中を覗くとそこには闇が広がっており、袋の底すらも見えない。慌ててしゃがんでニャンニャンにも見てもらう。




「あっ! これは空間拡張の魔法がかけられてる魔導具かもしれないのです。容量にもよりますが、かなり貴重な物なのです」




「えっ! すごっ! アイテムボックスじゃん! いや、マジックバッグか……? それで中身はどうやって出すの?」




「え~と手を差し込んで、取り出したい物を意識してアポートを唱えるのです」




 アポート……ああ、ニャンニャンに習った物を引き寄せる魔法か。ん? 取り出したい物?




「じゃあ、中に何が入っているか分からないと取り出せないのかな?」




「ん~~っ! 壊せば中身が全部出てくるのですが勿体無いですし、ケイさまなら鑑定すれば良いのではないのです?」




「あっ! そうか!」




 早速、ニャンニャンの助言にしたがいマジックバッグを鑑定してみる。すると中身の情報だけではなく魔法陣が浮かび上がり、さらにその魔法陣が三層にわかれていく。




「あれ、中身だけじゃなくて魔法陣……魔法円が浮かび上がってきたんだけど……」




「にゃっ! す、すごいのです! その魔導具はまだ構造が詳しくは解析されていないはずなのです。ダンジョンの深層以外ではほとんど発見されないし、構造が分かって複製が出来たとしたなら、もの凄い偉業になるのです」




 まあ、偉業とか功績とかは興味ないけど、各方面に多大な影響はでるだろうな。どんなに高くても買いたい人とかも出てくるだろうし……でも待てよ。犯罪者が手にいれたら犯罪がらみの物が街に持ち込み放題だし、戦争時の物資補給とかにも絶対につかうよな~。とりあえずは白狐のみんなに持たせたり、本当に認めた人にだけにあげるぐらいで販売の方は様子見だな……。




「とりあえず、袋の中身の一覧と魔法円を紙に……そうだ! 折角だからニャンニャンに習った念写を使ってみるね」




 そう言ってニャンニャンの返事を待たずに、鑑定で浮かび上がったものを紙に転写していき、出来上がりをニャンニャンに渡していく。




「凄いのです。こんなに鮮明な念写は、熟練の魔術師でも絶対にできないのです。なるほど……この魔法円には大地を表すアルドの文字が刻まれているのです。多分、この文字と何らかの言葉を組み合わせると空間が拡張されるのです。あたちに任せてもらっても良いです? 詳しく調べてみたいのです」




 興奮気味のニャンニャンに魔法円の解析はお任せして、オレの方は袋の中身の一覧に目を通していく。ポーションや魔物の肉、武器、指輪など、かなりの物が種類関係なく詰め込まれているらしい。ふと武器に肉がのっている映像が頭に浮ぶ。さすがに中では上手く分けられて収納されているんだよね? すべての中身が生臭いとか最悪なんだが……。そんな事を考えながら一覧に目を通していると、一つのアイテムに目が留まる。擬態の杖? これってミドリンたちが無くなったって言ってた杖だよな……。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る