第76話 同じ女性として

「よかった! 上手くいった! ニャンニャンもみてみて」




 【ものづくり】で作り出した二人のステータスが書かれた紙をニャンニャンに渡し、後ろから抱っこして一緒に座る。




 名前:ケイ 

 種族:人間 

 年齢:14歳

 

 LV:7

 HP 170/170

 MP 350/350

 STR 37

 VIT 48

 INT 112

 DEX 40

 AGI 33

 RES 68

 LUK 52


≪ユニークスキル≫


 秘密の部屋、魔法全適性、ものづくり


≪スキル≫


 料理Lv10、言語理解Lv10、神聖魔法Lv10

 水魔法Lv1、火魔法Lv1、風魔法Lv1

 土魔法Lv1、光魔法Lv1、変身魔法Lv1

 無属性魔法Lv1



 ♦ ♦ ♦ ♦


 名前:ニャンニャン 

 種族:妖精族 (ケット・シー) 

 年齢:5歳


 LV:4

 HP 100/100

 MP 230/230

 STR 16

 VIT 27

 INT 52

 DEX 19

 AGI 31

 RES 47

 LUK 30


≪ユニークスキル≫


 看破(魔法)、探索(資源)


≪スキル≫


 闇魔法Lv4、無属性魔法Lv5、言語理解Lv2


≪種族スキル≫


 隠密



 ♦ ♦ ♦ ♦




 お互いのスキルについて一通り簡単に説明し合い、ある程度は理解する事が出来た……と思う。まずニャンニャンの種族スキルは隠密で、これは発動すると触れている相手も含めて気配を消せるそうなので、オレが抱っこするだけでその恩恵を受けられるらしい。




 そしてユニークスキルは二つあり、まず看破というスキルがあり鑑定の魔法版のような感じで、相手の使える魔法が分かるというものである。でも、なぜかオレには看破が効かなかったらしい。そして、もう一つが資源探索というスキルで水源や鉱物資源などの、ありとあらゆる資源の場所を発見できるというスキルである。このスキルは地味に凄いと思う。もしも生まれた時代が違ったなら、国づくりにも活かせたのではないだろうか。




「でも本当にケイ様は凄いのです」




 ぬいぐるみを抱っこしながら、ニャンニャンがステータスの書かれた紙を見ながらそう呟いた。先ほどユニークスキルの【ものづくり】を見せる為に、ニャンニャンをモデルにしたぬいぐるみを作ったのだが、どうやら気に入ってくれたらしい。




「褒めてくれるのは嬉しいんだけど、他の人には絶対に内緒だからね」




「分っているのです。でも凄いのです。ユニークスキルは一つでもあるだけで奇跡なのです。それを三つも……」 




「えっ! ニャンニャンも二つあるよね」




「……それは……ケイ様と同じ理由なのです」




「えっ? 同じ理由?」




 ニャンニャンの話では、王の血が濃いほどユニークスキルの発現率が上がり、ユニークスキルがないと王位を継げない事もあるらしい。 




「ちょ、ちょっと待ってオレに王の血は流れていないよ」




「ホ、ホントなのです?」




「うん、ホント……全然、まったくこれっぽっちも流れていないよ。王の血が云々の話はケット・シーだからじゃないの?」




 ニャンニャンは首を傾げ、必死に何かを思い出しているようだ。




「確かに人族の事はわからないのです。でも妖精族では複数の属性の魔法を使える者や、強力なユニークスキルを持つ者が王女と結婚したり、王や王子の側室になったりする事もあるのです」




 権力者が優秀な遺伝子を受け継がせる為に、強力な魔法やスキルの持ち主を自分の一族と婚姻させるっていうのは、ありそうな話ではあるな……。そうしないと、相手が他の王族か近親者しかいなくなってしまうし……あれ? この話が人間にも当てはまるなら、オレも王女さまの婚約者候補になってしまうのでは……。神様に欲しいスキルを直接いただいている特殊なケースのオレの能力が、遺伝するのかは知らないけど……。




「ニャンニャン、想像以上に面倒臭い事態になりそうだから――」「――分かっているのです。秘密にするのです」




 まあ、二人で力を合わせればいくらでも逃げれそうだけど、面倒に巻き込まれないに越したことはないからね。










 ♦ ♦ ♦ ♦










「じゃあ、この部屋で使っても危なくない魔法とかを見せてよ」




「あいなのです」




 ニャンニャンは何も言わずにズブズブと床に沈み込んで行く。正確には影にだが……。そして、少し離れた所に下からせり上がるように現れる。




「おお~っ! それが影移動ってやつだね! 凄ご~~っ!」




「あい、影移動なのです」




「初歩的な話で申し訳ないんだけど……詠唱はしないの?」




「あたちはこの魔法を使いなれているので必要ないのです。詠唱はイメージを明確にする助けになるので、まだその魔法に慣れていなかったり、より強力にしたりしたい時に使うのです。でも、時間がかかるのであまり実戦向きではないのです」




「なるほど……他にも何にかあるかな? 危なくないヤツ!」




「ん~! シャドウバインドなら、危なくないのです」




 ニャンニャンが椅子に手をかざすと、床からいくつもの黒い帯状の影がとび出して椅子に巻き付いていく。




「おお~っ! 凄いね。連携して敵を倒すときに便利そうだね」




「でも、あたちは攻撃の魔法はあんまり得意じゃないのです」




「そうなんだ~。でも、巻き付かせる場所を考えれば、この魔法も十分に攻撃に使えそうだけどね」




「本当なのです? 教えて欲しいのです」




「今度、近くの森に行って一緒に練習しよう」




「あいなのです」




 ニャンニャンがまた尻尾をピーンとしている。やっぱり、あの尻尾ピーンは嬉しい時の仕草だったようだ。確かニシキヘビなどの大型の蛇は獲物を窒息させて仕留めるイメージがあるが、実際は締め付けて血の流れを止める事により、窒息よりも早く獲物を仕留めているという研究結果を読んだ気がする。ただ記憶が曖昧でどこまで正しいかは分からないが、ただ巻き付けるのではなくその辺りを意識すれば、十分に敵を無力化出来るだろう。血管や窒息のメカニズムを知っているなら、話は早いのだけど……。




「あたちもケイ様の神聖魔法を見てみたいのです」




「いいよ、何がいいかな? とりあえずよく使う魔法を使ってみるね」




 祈り、加護、プロテクションの順にかけていく。




「え~と、知ってるかもだけど一応、説明するね! 一番最初にかけたのが体力、魔力とスタミナの回復量が一定時間上昇する効果がある祈りで、二番目にかけたのが防御力の強化と状態異常の耐性をあげる加護、そして最後がプロテクションで魔法で球体上のシールドを生成する魔法だね」




「凄いのです。神聖魔法はヒールと浄化ぐらいしか見た事がなかったのです。ちょっと攻撃してみて欲しいのです」




「えっ? 大丈夫だと思うけど……軽くだよ。あっ! さっき聞いた無属性の魔法を撃ってみていい?」




「あい」




「よし、行くよ! マジックアロー!」


 


 半透明の魔力の矢が尾を引きながらニャンニャンにとんでいき、シールドにぶつかり凄い音と共に魔力の矢が掻き消える。




「やばっ!」「凄く強いシールドなのです!」




 すぐさま部屋のドアがノックされる。




「ケイ様、何かございましたか? 大丈夫でしょうか?」




 部屋の外にメイドさんが控えているって言ってたな……。少し威力を上げすぎたらしい。




「すみません! 何でもないです」




『あっ! メイドさんに聞きたい事があったんだった。部屋に入れるからシールドをとくよ』




『あいなのです』




 ドアを開け廊下に顔を出すと、置かれた椅子に座っていたメイドさんが急いで立ち上がる。薄暗い廊下にロウソク一本で控えていたらしい。




「えっ! こんな暗い所にいたんですか? 少しメイドさんについてお話を聞きしたかったのですが、そこから離れるのはマズいですかね?」




「いえ、ケイ様がご一緒なら問題はございません」




 何でこの人はオレの名前知ってるんだろうと思ったけど、ハンドクリーム配った時に自己紹介したわ……。残念ながらオレの方は憶えきれなかったので、鑑定でみさせてもらおう。




「え~と、アメリアさんでしたね。中でお話を聞かせて貰っていいですか?」




 彼女はもの凄く驚いて「えっ!」と言って固まってしまった。そうか、何かされると思っているのかもしれない。




「あっ! いえ! 部屋のドアは開けたままで構わないですよ」




「はっ! す、すみません。違うんです。名前を憶えていただけているとは、思いもよらない事で驚いてしまいました」




「なるほど、そういう事でしたか。記憶はいい方なんですよ」




 彼女には部屋に入ってもらい、テーブルセットに座って話を始める。どうやら、お茶の用意も持って来てくれていたようなので入れてもらう。彼女にもすすめたがメイド長に叱られるという事で断られてしまった。




「それでお話というのはメイドさんの着ている服についてなんですが、決まりみたいなものはあるんですか?」




「特にはありません。一応、できるだけ清潔な服を着るという事でしょうか? それでもお古を直して着ているので、新人の子たちは大変かもしれません」




「私は商人をやっているのですが衣類関係も扱う予定なので、メイドさんの服を制服としてそろえる提案を貴族の方たちにして行く予定です」




 反応がないので彼女の顔に視線を向けると、キラキラした目でこちらを見ていた。




「ど、どうかしましたか?」




「いえ、同じ女性としてケイ様の生き方をとても素晴らしいと思います。とても感動いたしました」




 あれ? 同じ女性……? どうしてそうなった……。




 ♦ ♦ ♦ ♦




〇ステータス


HP:体力。0になると死亡・戦闘不能になる。

MP:魔力。0に近づくほど正気を失う。RESが高いと正気を保てやすくなる。

STR:筋力。身体能力・物理攻撃力に影響がある。持てる武器の重量・アイテムの最大所持量にも影響する。

VIT:生命力。HPの最大値・スタミナ・物理攻撃に対する防御力に影響がある。状態異常耐性にも影響がある。

INT:知力。MPの最大値・魔法の攻撃力・回復量・その他の効果の上昇。MP消費量の減少。

RES:抵抗力。魔法に対する防御力・精神力。魔力欠乏時の正気度に影響がある。状態異常耐性にも影響がある。

DEX:器用さ。遠距離武器の命中率・罠の設置・解除などに影響がある。生産スキル(技術・作業)に影響がある。

AGI:素早さ。行動速度・回避率に影響がある。

LUK:運クリティカル率・ドロップ率・アイテムの効果及び運にかかわるすべてに影響がある。


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