第11話 ちょろい女
「ふー、ごちそうさまでした」
日替わり食堂は量が多い日と少ない日がある。
今日は普通に量が多い日だった。正直、女性がこの量食べれるのか?と思うくらい多かった。
だけどまぁ、最近の女性というのはすごいものだ。
チラッと横を見ると美味しそうにとんかつを頬張る植坂。
食べるスピードは流石に俺の方が早かったが、もうすぐに食べ終わりそうだ。
「うまかったうまかった」
と、そのタイミングで斗羽が食べ終わり、お腹をさすっている。
こいつも帰宅部なのによく食べきったと思う。
いやまぁ、俺も帰宅部だけど。
「んじゃ、お先に失礼するか」
斗羽が食べ終わったことだし、もうここにいる必要もない。
女性陣はまだ食べてはいるけど――
「前崎さん、お先に失礼しても構いませんか?」
「大丈夫です。では」
――よし、許可をもらったのならこちらのものだ。
俺はトレーを持ち、椅子を後ろに引いて立ち上がる。
こんなにも自然に椅子から立ち「よし、行こうぜ」と斗羽に言ってるんだ。
流石のこいつもこの空気感に流されてバイバイと言わざるを得ないだろ!
「ばいばーい」
ほら言った。今回は俺の作戦勝ち――
「――なんて言うわけないでしょ!何行こうとしてるんですか?私、まだ食べ終わってません!」
どうやら俺のクソ雑魚作戦は散ったようだ。
こんなのでくぐり抜けれる訳が無いとは思っていたが、まさかこんなに反応してくれるとも思っていなかった……。
「お前はほんと元気いっぱいなやつだな。それはいい事だぞ。今後もその元気を欠かさないように。じゃあまた、どこかで出会うことが無いことを」
「えへ、褒めてくれた……」
……なるほど、これでくぐり抜けられるのか。
――いや、ちょろすぎないか!?
上から目線で言われても照れるってどういう神経を持ってるんだ?これは好きな人に褒められたから、喜んでいるというポジティブ解釈でいいのか?いや、それしか考えられないけども!
「……じゃ、斗羽行こうぜ」
「えーもっと一緒にいればいいのに」
「無理。行くぞー」
斗羽の提案も断り、未だに照れる植坂を後にして、俺はテーブルから離れる。
「いいのか?せっかく可愛い子が話しかけてくれたのに」
「顔だけだって、絶対」
「そうかー?」
「絶対そう。てか、女求めてないし」
「それ、なんでなんだ?ずっと気になってる」
理由かぁ……。
来夏が婚約者というのもあるし、彼女を作るメリットもわからんというのもあるし……子供の頃の約束が忘れられない、ってのもある。
「気になってると言われてもなぁ……欲しくないものは欲しくないしなぁ……」
「なんだその理由」
「そんな理由ってなんだ。真面目な理由だろ」
当然、言うわけが無い。
小さい頃に結婚しようと約束したことを、こいつなんかに言うわけが無い。
斗羽にからかわれる未来しか見えないからな。
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