スカイブルーの腕輪
1.ヒンメル/広場
「わあ、よく似合ってますよ! フィンちゃん!」
「ふむり。わたしに似てかわいらしいですね」
すっかり陽が落ち切った頃、私たちは久しぶりにスイちゃんミカンさんと合流した。二人ともフィンの衣装を気に入ったようだ。
「それに比べてチキンはなんです、それ」
「あはは……個性的ですね」
ふむ。どうやら二人は私の衣装に思うところがあるらしい。そんなに変だろうか? この【アイラヴ♡MMO】Tシャツは。
「フィンはよく似合ってるとおもいますっ」
すかさずフィンがフォローしてくれた。しかしスイちゃんは「すっかり懐柔してるですね」と不満げだ。
するとミカンさんがこそっと耳打ちする。
「……スイさんはきっと、フィンちゃんだけプレゼントを貰ったのが気に入らないんだと思います」
そう、なのか? いやそもそも、これはフィンが自分で買ったのでプレゼントでは無いんだが……。
だがそういうことなら話は早い。
「皆に渡したいものがあるのだ」
そう言って鞄から用意していた包みを出す。それぞれに配ると、皆は不思議そうな顔を浮かべながらそれを開けた。
そして――口々にリアクションをする。
「わぁ……!」
「ほえ」
「これは……【スカイブルーの腕輪】?」
彼女たちが手にしたアイテムはそう、【スカイブルーの腕輪】。これは先ほどの服屋に並んでいたアクセサリーであり、自分の服と一緒にこっそり買ったものだ。
もちろん、皆へのプレゼントのつもりで。
「嬉しいです! でも、どうしてこれを?」
「なんとなく欲しかったのだ。パーティの……仲間としての証が」
ここまで世界樹を登りボムと戦い、海を渡って共にクエストをこなしてきたが……その冒険ももうすぐ終わってしまうだろう。
それを寂しく思い、なにか物として残る共通の記念品を用意したのだ。
「……ありがとう、です」
「えへへ、たからものにしますっ」
気に入ってくれるか不安だったが好評なようで良かった。
私も自らに用意したそれを付け、四人で合わせるように腕を突き出す。
「そろそろ終わる、ですか」
「クエストはやれるだけやりました。明日にはきっと戻れます」
「ああ。残りはフィンのお兄さんへ贈る【綺麗な花】だけか」
「もう、すこし……」
私だけじゃない。皆寂しげだ……しかし物事には必ず終わりが来る。それにこれはフィンの病気回復を助けることができるのだ。
きっとお兄さんも心配している。そう、終わりの時は近いのだ。
「それじゃあ、今日のところはいったん落ちますね!」
「ん。わたしもねる、です」
「ああ。みんなおやすみ」
そんな訳でいったん解散となる。こうなると私も落ちようかと思ったが……フィンはどうするのだろう?
そう思っていると、ふいと服の裾を掴まれた。フィンだ。
「……おにいさん、わがまま言ってもいいですか」
そう言う彼女の表情は暗い。……いや、紅い。まさか病状が悪化したのか!?
心配する私に対し首を横に振り、彼女は続ける。
「その、ひとりで寝るのはこわくて。
だからあの、わたしが寝るまで傍にいてもらえませんか……?」
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