決着 ゴールデンスライム
1.ブロンズケイヴ最奥
通常とは違う渾身の攻撃。それは通常時は堅い岩に拳を打ち付けている様なものなのに、突然マシュマロを殴り付けた様な……そんな柔らかい感覚を覚える。
私の攻撃は見事ゴールデンスライムに命中した。想像以上の手応えの無さに一抹の不安を覚えたものの、すぐに金色の飛沫が飛び散る。
……どうやら思惑通りクリティカルが出たのだろう。スライムは攻撃を受けて更に小さくなったようだ。
しかし今度は小さく、そしてより素早くなったその身体で暴れ始める。
「くっ……!」
これではまともに攻撃が当たらない。猿の手はもちろん、より重い盾で殴るのは至難の業だろう。
万事休すか……しかし以前にもこのような状況に遭わなかったか?
「チキン殿!」
そう叫んだ海パンさん。ついに裸一貫となった彼だが、その声を聞いて思い出す。【スライムモンキー】との戦いを。
「今度こそ……!」
まずは攻撃範囲の広い【スイング】を当てに行く。すると狙い通り、攻撃を受けて一瞬怯む事で隙が生まれる――!
すかさずシールドバッシュ、そしてヘヴィストライク……しかし私の体力も限界だ。
頼む、届いてくれ――――
【冷凍ミカン様のパーティがゴールデンスライムを討伐致しました!】
膝を着いて息を切らしながら前を見据える。金色の飛沫が、大きな音を立てて散っていった。
……やり遂げたのだろうか?
【おめでとうございます! ゴールデンスライムから『金色の鍵』を入手致しました】
突如辺りに響く音声と共にカチリと小さな金属音を立て、ゴールデンスライムが居た空間に金色の鍵が転がる。
それを手にすると後ろからパタパタと足音がした。
「やった! やりましたね、チキンさん!」
「ううむ、見事な一撃でござった!」
「おいしいとこ、ずるです」
召喚されたスライムたちも消えたらしく解放された皆がそこにいた。装備はボロボロだが、誰も戦闘不能になっていないのは幸いだ。
「ありがとう……皆のおかげだ」
「拙者は感動してるでござるよ。あの時の戦士がこんなに立派に成長して……!」
壊れた水泳ゴーグルごしに涙を拭いながら海パンさんは泣いた。
……私たちは最近出会ったばかりな気もするが、こう感動されるのも悪くはないか。
「それじゃ報酬、いただくですか」
無表情のまま目を爛々と輝かせるスイちゃん。
「どうすればいいのだ?」
「奥に開いたエリアに宝箱がありますから、鍵を使って開けるんです!
でも、チキンさんは本当に運が良いんですね。金鍵なんて、滅多に出ないんですよっ」
そうなのか? ともあれ、金色の鍵を持っているのは私だ。皆と歩いて件の報酬エリアへ行き、煌びやかな宝箱の鍵を開ける。
中にはお金はもちろん装備品、薬品、様々なアイテムが入っていた。
横でスイちゃんが無表情のまま尻尾をぶんぶん振り回して「やばいです。やばすぎです」とはしゃいでいる。可愛らしい一面だ。
「これは皆で分けてくれ。今回お世話になったせめてもの礼だ。足りないかもしれないが……」
「いいのっ!?……です?」
「もう、何言ってるんですかー! こういうのは山分けが基本です、チキンさんだって大活躍でしたし!」
「ほらほら、遠慮せずに! この剣なんてきっと似合うでござるよ!」
そう言って立派な鋼で出来た剣を渡されるが……身体がふらっとして、危うく転びかける。
別に剣が抱えきれないほど重いとかではない。慌てて心配する皆をよそに、私はもう重くて限界な瞼を何とか持ち上げて言う。
「すまない。でも本当に、なんだか……ねむい」
残った体力で言えたのはそれくらいだった。
瞬間、私の身体はバランスを崩しその場に倒れ――慌てて駆け寄るミカンさんの姿を最後に、その意識を閉じる……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます