第5話
すると今度は、ブレザーを着た少女がやってきた。彼女は完璧なメイクをし、にらむような笑顔をしてやってきた。あなたの顔を見ると、泣いた。くやしそうに泣きながら、あなたを見下ろした。
少女は、友達に囲まれて笑っていた。あれから、どうにか肌を治しての高校生活だった。また顔を上げて笑うことをした。中学生活の不安を、すべて払うように、少女は積極的に、学生生活を送った。部活を二つかけもちし、勉強も、おしゃれにも力をいれた。二度と、下を向いて生きるものかと思った。
中学の時の同級生に会う度に、誇らしかった。相手が感心したような顔をする度に、自分があの日々から遠ざかっていることを実感できた。
にきびの跡を見る度に、不安になるのを、押し殺した。いずれ、この跡も消えるんだ。そう信じていた。信じられる自分になることを夢見ていた。
心の底から笑う度、心の奥から、何かが抜け出ていく、そして空っぽになってしまう、そんな気がした。
そんな時は、いつも、あの光景を呼び起こされた。
そのたびに、少女の中に、激しい怒りがわき起こり、それを必死に振り切るのだ。
「子供が、公園でひとりで、地面を掘っている。砂場じゃなくて、地面をスコップで掘ってる。たしか、気味が悪いって、私、そう思ったわ。忘れてやりたいのに、浮かんでくるの」
怒りは恐怖に近いものだと、彼女は知らない。彼女は、もはや公園の前を通らない。まったく違う通学路になる、高校を選択したのだ。その光景を「引き金」のように、おそれている。彼女は思い通りにはならないと、怒りに歯をむき出しにして、髪を引っ張った。そうして、忌々しげに、あなたを見下ろした。
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