第2話
子供が、ずっと地面を掘っている。公園の地面を掘っている。
すぐ近くに砂場があるのに、固い地面の砂を、砂場用のスコップで、掘っているのだ。スコップの縁、ほんの二ミリほどしか、すくえない砂を、えんえんと、掘っている。子供は楽しい顔をしていない。ひたむきな顔もしていない。どこかうろんな顔つきで、それが日常であるように、惰性的に、しかしたゆまず掘っている。
しばらくすると、しゃがんだまま、足をにじにじと動かして、掘る位置を変え、そうして、またスコップを突き立てる。子供の周りには、楕円型の浅い掘り跡が、いくつも出来ていた。
そのイメージは、時に表すなら一瞬で、カメラのフラッシュのようにあなたの脳裏に光った。あなたはそれを注視したわけでもないのに、状況の描写まで、なぜか観察できて、理解していた。映像がもはや必要ではないように、夢の中で、夢の先を作るように、たとえ後ろを向いていても、あなたはそれを補う。
あなたは、その光景の情報量に、めまいがした。表情はいっさい変わらず、薄く唇を明け、薄目で宙を見上げた顔をしていた。思考とて、している訳ではなかった。しかし、脳が、ちか、ちか、と点滅した。いたずらに、灰色のもやのかかった脳裏は真っ白になり、また黒くなる。
そうして、ばつんと回線が切れるように、あなたの意識はそこで途絶えてしまった。
それは、眠れないあなたの、唯一の自意識の遮断、休息の手段だった。
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