第13話 順を追って追いつめていくわよ。
次に呼ばれた証人はロゼラインの元侍女ゾフィだったわ。
彼女はロゼラインが毒殺される直前に、毒に手を触れたのが
見覚えのあるブルネットの女性。
ノルドベルク家は彼女を用済みと放逐しただけで、それ以上の口封じを行わなかったことを後悔したようだわ。
「お茶を注いだからなんだというの! この女がお茶を用意する途中で毒を入れたかもしれないじゃないの!」
ゾフィの証言を遮り見苦しい抵抗を試みるロゼラインの母ロベリア。
「それは不可能です」
ホーファー伯爵が断言。
「追跡魔法で明らかにされている通り、彼女は毒の瓶に指一本触れていないのですよ。瓶に触りもしていない者がどうやって毒を混入させるというのですか? そしてあなたをその日その時に厨房で見かけた証人は他にも大勢いるのです」
一刀両断だわね。
「『すべての不可能を排除して最後に残ったものがいかに信じられなくてもそれが真実である』、よく言ったものよね」
「それ知ってる、シャーロックホームズでしょ」
私とロゼラインは法廷内をあちこち移動しながらしゃべっていたわ。
現在霊体であるロゼラインを視認できる者(彼女の死を心から惜しんでいる者)がどれだけいるのか探るためよ。
法廷内を移動して私たちの動きを目で追っている者たちをあぶりだしたの。
何のためって?
まあ、じきにわかるわ。
「殺すつもりなんてなかったわ、ちょっと身体の具合が悪くなればいいと思っただけ、しつけのつもりだったのよ」
出た、虐待親の超理論!
「まさか死ぬなんて思ってなかったのよ。毒は毒でも、そんな特別な毒だなんて知らなかったわけだし……」
「つまり、認めるのですね。毒をロゼライン嬢の飲み物に混入させたことを?」
しつような伯爵の追及にそれでもしつけのためと言い張る母親。
「失礼ですが、ノルドベルク家の家風はかなり一般の常識とはかけ離れておりますな。良い意味ではなく悪い意味でですが」
それに、伯爵ダメ押し。
そしてそして、私が発見した弟エルフリードの日記もダメ押しの証拠として紹介されたわ、エッヘン!
ざまあだわ。
弟のエルフリードは家庭内で当たり前に行われていた言動が、他の貴族から口々に批判されているのを聞いて茫然自失。
「ノルドベルク公爵家の『しつけ』とやらが我が子に毒を盛ることであるというのは、普通の親子でも驚きですが、ロゼライン嬢の場合、王太子の婚約者でありましたので、危害を加えようとなされたその時点で『反逆罪』が適応されます」
フフ、有罪は免れないってわけよ
「それに何ですかな?『可愛げがない』『不細工』などなど、人格批判や根拠不明の侮辱の言葉。ロゼライン嬢が訴えていれば王族への侮辱罪も適応されるような文言ですな」
エルフリードはさらに衝撃を受けたような顔をしたのを見て、ロゼラインはその様子を冷ややかに見ていたわ。
彼は王太子パリスたちの、アイリスの人生を狂わしかねないたくらみに笑って賛同していたからね。
母親が
自分にはそれが向けられていないから、母と一緒に当たり前のようにロゼラインをさげすんでいた。
いわゆる虐めの傍観者なのよ。
「そんな子に同情なんかしないし、どんな刑罰が言い渡されようと知ったことじゃないわ!」
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