第12話 王宮裁判が始まるわよ

 さあ、いよいよ王宮裁判よ。


 被告人は王太子の婚約者、クーデン男爵家の令嬢サルビア。

 三大公爵家の一つノルドベルク家の夫人ロベリア。

 そして同じくノルドベルク家の嫡男エルフリード。


 この三名の逮捕に王宮内には激震が走ったの。


 罪状は『反逆罪』。

 王族及び準王族に危害を加えようとしたりその協力をしたと見なされた時に適応される。


 王族とは現在即位している国王から見て直系の血族。

 準王族とは国王の兄弟姉妹とその家族、および、王族と婚約関係にあり将来王族に加わる予定の者。


 ロゼラインは王太子の婚約者だったので『準王族』に当たるの。


「準王族殺害容疑ですって! 何を言っているの? 私自身が王太子殿下の婚約者で準王族なのよ、お分かり!」


 罪状を読み上げられサルビアが噛みつくように言ったわ。


「確かに今はそうでしょう。しかし犯行が行われていた当時は違います。そして殿下の婚約者になったからと言って過去の罪が消えるわけではありません。なお、裁判長の許可を得ないうえでの発言はお控えください」


 警務省ナンバー2のホーファーさんという人がサルビアに注意したわ。

 彼はあのゲオルグの直属の上司らしいけどね。


 そして、一人目の証人はなんとなんと、ロゼラインが化けているミカ・キタヤマよ。


 サルビアは彼女の名前を聞いたとたん目を白黒させたわ。


 どうしてあの女が生きてるのって顔だったわ。

 フッフッフ、あなたにはわからないでしょうけどね。


 ミカことロゼラインは証人席であの日のことを説明したわ。


 でもサルビアは納得しなかった。

 使用人の殺害容疑がどうして『反逆罪』と結びつくのかって、まあ、この裁判での罪状がそれだからね。


 ロゼラインは複雑な顔。


 掃除婦ミカの殺人未遂は故意であろうと過失であろうと、被疑者も検察側もスルーしてもいいもののように扱っている。反逆罪の被害者として挙げられているロゼラインもまた彼女自身ではあるけど、彼らにとっての使用人の命の価値の低さにはやりきれなさも感じていたみたい。


 裁判長は順を追って説明したわ。


 まず、ミカ・キタヤマに使用された毒とロゼラインを死に至らしめた毒は、同じくサルビアの実家の男爵家の領内でしか取れない希少な植物から抽出されたものであること。


 そして改めてロゼラインの部屋にあった毒に追跡魔法をかけた結果、その瓶に手に触れた人物が明らかにされたということを。


 最初にかかわった何名かは家族なのか、姓はみな同じ。

 そしてその次にサルビア、王太子、エルフリード、ロベリアの名。

 その後は捜査のために瓶に手を触れた魔法省の人間の名があげられた。


「おわかりですか? 王太子殿下と現在被告である三名が出てきたのです。追跡魔法に関しては大魔法使いの高弟レーツエル殿に依頼しましたので間違いはないでしょう」


 ホーファー伯爵が説明したわ。 


「サルビア嬢の前に上がった名の主たちはクーデン男爵領に実在しておりましたが、数か月前に謎の失火で家族全員死亡しておりました。この毒は現在製造が禁止されており、過去に作られた毒に関しては全て王宮に報告されており、男爵領で確認しましたが数は減っておりませんでした。つまりつい最近何者かがその家族にこの毒の製造を依頼し、完成と同時に口封じのため殺されたとみるのが妥当でしょう」


 被告人である三名の前に挙げられた名前の主の調査の結果も説明されたけど、口封じなんて恐ろしいわよね。


「口封じなんてあんたの推測でしょう。それを私が持っていたとしてもその後王太子殿下に渡したのよ。王太子殿下が許してくださったものをどうして今更ぐちぐち言われなきゃならないのよ!」


 サルビアの反論に王太子は苦虫をかみつぶしたような顔。

 

 自分の名前を出すなって感じ。


 王宮内に毒を持ち込んだだけでも『反逆罪』は適応されるし、王太子自らその罪を隠蔽したなんて、明るみにされたくない事柄だったからね。

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