第6話 腰ぎんちゃくを成敗するわよ
さてさて、彼らの誤解が解けたところで、ロゼラインが自分の死が自殺ではないことを二人に打ち明けたわ。
そのあと、サタ坊の見た『真実』もざっくりと説明したわ。
でも、
自殺と判断するにはおかしい点が多いのに事件は深く追及されず幕引きとなったわけよ。本来ならサルビアが毒を持ち込んだことも、さらにロゼラインの弟や母親がそれの隠ぺいに力を貸したことも、シュウィツアの法律で言うと反逆罪に当たるほどの罪なんだけどね。
手づまり感の広がる中、私はまず、できることからやっていこうと提案したわ。
それは王太子らの陰謀で、アイリスに襲いかかろうとした強制わいせつヤロー、ヨハネス・クライレーベンに引導を渡すことよ。
これは正攻法でいってOKだったわ。
犯罪とまで言い切れない貴族同士のもめごとは王宮内の調停裁判で結審されるの。
原告側と被告側の貴族、両者の訴えを判断する裁判長と書記、あとは陪審的な役目をする無関係の貴族から二名、以上のメンツで開かれる。
アイリスへの乱暴狼藉(わいせつ行為)を婚約者であるゼフィーロ王子と父親であるウスタライフェン公爵が訴えたの。それで被疑者であるヨハネスと父親であるクライレーベン侯爵が呼び出されたってわけ。
原告のメンツを見て父親の侯爵なんて大汗よ。
ヨハネス本人もうろたえていたわ。
この世界では女性の貞操観念が非常に厳しく、男性から言い寄られて『わいせつ』な行為でもされようもんなら、女性の方が恥の感覚を死ぬほど強く持つものなの。だから、恥ずかしがってアイリスは誰にも言えないだろうとたかをくくっていたのに、それを訴えられたわけだからね。
だけど、無駄にプライドの高いこの男は裁判で悪者扱いされるのに耐え切れず、『情事』という言葉を使ってゼフィーロにはますますにらまれ、陪審役のゼクト侯爵にはこうつっこまれた。
「ウスタライフェン嬢に無理やりその、何ですかな……。クライレーベン家では男女が合意のもとに行う密事と相手が嫌がっているのに強引にことに及ぶ、ええと……、そういうこととの区別や倫理をちゃんと教えてないのでしょうかな?」
ひょうひょうとしたおじいちゃんなんだけど言葉を選んじゃって、まあ……。
要するに『お前のとこのせがれは、好かれているわけでもない相手に無理やり迫ることを色恋ざたに数えるほどの阿保なのか?』と、いう意味だけどね。
ウスタライフェン公爵はことの裏にパリス王太子の陰謀があることを聞かされ、内心はらわた煮えくりかえっているわ。
そりゃそうよね。
責められ続けているヨハネスの発言はどんどん迷走し、ロゼラインが元居た国のJポップの歌詞みたいな『迷言』まで飛び出してきちゃって、それを聞いたロゼラインがゼフィーロの後ろで大爆笑。
どうせ誰にも見えてないとたかをくくって口を開けて大笑い。
「ヨハネス殿も何かと大変だったのは理解できます。ありえないような事件や不幸が王太子殿下の周辺には起こりましたからね。日ごろから殿下の傍近くにいたヨハネス殿の精神的負担は並大抵のものではなかったのでしょう。それがもしかしたら認識の狂いみたいなものをもたらしたのかもしれませんな」
いずれにせよ、双方の落としどころを探らなきゃならないので、ウスタライフェン公爵が助け舟を出したわ。
「なるほど、アイリスへの不埒極まるふるまいも精神の働きが劣化している状況で起こしてしまったということなら理解できないことはない。あ、理解と許すは同義語ではありませんから。でも、そういうことなら一度領地に帰って休養なされてはいかがですか?」
ゼフィーロがそれに続いて発言。
要するにこれは『王子の婚約者に手を出そうとするような馬鹿に二度と王都をうろつかせるな』と、いう意味よ。
公爵と王子が望む処分を聞かされた父親のクライレーベン侯爵は、言われるとおり、息子を領地で謹慎させることを約束。
へへっん、大勝利! 言葉通り引導渡してやったわ!
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