女勇者とよく女の子と間違えられる賢者は魔王討伐をしますが、世界は平和になりませんでした。とりあえず魔王討伐したら僕らで革命を起こします。

零5s4

第一章 『仲間と共に』

第一章1 『最初の街』


勇者と魔王討伐を命じられ、旅を始めたのが5日前。そして今日、はじめの街にやっとのことでたどり着いた。


「マイ〜。やっとついた」

ユウは僕に抱きついてくる。ユウが頭ひとつ分背が高いので、抱え込まれる形だ。


「うん。見ればわかる」

「なんかもっと。ほら。ないの?私たちが魔王討伐に出て、たどり着いた初めての街だよ?」


勇者は、アールイゼン家という代々、王の臣下となり武芸に励んできた名家の令嬢、ユウ・アールイゼンだ。昔からユウは稽古をサボって家を抜け出し、僕を森に連れ込んだりしていたのもあり、仲が良かった。


一方僕は、


昔から体格に恵まれない。手足が女の子のように細く、顔はふっくらとした女の子っぽい顔つき。髪は癖毛で先がくるっと曲がっている。


よく言えば、かわいい。悪く言えば、勿体無い。鏡を見ても、自分はかわいいのだろうというのは理解できる。


そんな体だから筋力もつかない。剣などまともに振えない。


しかし、僕は並外れた量の魔力を持っていた。その上、魔力自然回復というスキルも持っている。


これが体格に恵まれない代わりに、神様から授けられた僕の長所というなら神を呪う。


そんな事は無関係に、こんな外見にしやがった神様は呪おう。そう物心ついた時には思っていた。外見のおかげで本当に大変だ。ナンパ、誘拐、痴漢。何度されかけたことか。


しかし、その神からの授けられた、ただ一つの取り柄は有効活用しなければと、魔法学に励んだ。

それも全てあの日の復讐のため。


僧侶として回復呪文などを学び、魔法使いの師匠のところで魔法を学んだ。


神の祝福か呪いか、魔法の才はあった。それ故に、12歳で僧侶の最高称号である、大僧侶を最年少で取得。


その1年後、魔法使いの最高称号、大魔術師の称号をも最年少で手に入れ、世界で初めて二大称号を手に入れるという暴挙。


その僕が得た二つ名は『最小最強の賢者』だ。


一つ文句を言わせてもらうと、『最小』は余計だ。


そして、昔、故郷を襲った奴への復讐心を糧に、研究を重ね、最強スキルを手に入れた。

その最強スキルは




『魔法全貫通』




というものだ。


その名前の通り、僕の魔法は全ての耐性や無効を無視して貫通させることができる。



「いちいち挨拶しに行かないといけないの、めんどくさいね。もう日は暮れそうだし、疲れたし。今日は早くベットに沈みたい」


今すぐにこの道端で寝れる自信がある。


「ほんと。皮肉を込めて、今挨拶に行ったっていんだけどさ」


ユウはやれやれと言うふうに、ため息を吐きながら言った。


「じゃあ、早く宿取っちゃおう。部屋はふた部屋でいいよね?」

「いいよ。僕はその間に使い切っちゃった消耗品を買い足しに行ってくるから」

 

「分かった。そこの宿取ってるから」

ユウは僕の後ろにある宿屋を指して言った。


道具屋で素早く薬草や、毒消し草を選んでいく。内緒で部屋で1人で食べるお菓子でも買っておこう。

それらを持って、会計をする。


「嬢ちゃん、家のお手伝いか。えらいな」

「まあ、そうです」


女の子と間違えられることはもうなれている。どうも人を騙しているようで、あまりいい気分にはならないが。


「薬草4枚と、毒消し草4枚、焼き菓子1袋。全部で銅貨172枚ね」


きっちりと言われた通りの金額を出す。

「毎度」


買ったものを抱えて、店を出た。


さっき、ユウと別れたところに戻ると、そこでユウが待っている。


「どうしたの?」

宿をとったのならそこで待っていれば良かったのに。


「そこの宿が空いてないみたいで、違うところを取ったからさ。どこか分からないでしょ?」

「そういうことか」


僕は先を歩くユウの後をついていく。


「で、そのとった宿、一部屋しか空いてなくてさ?」

「え?」

「ちょうど2人部屋らしいから取っちゃった」


もし、そこで違う宿を探して、泊まれるところがなかったら最悪だ。だから良い判断だろう。


にしても、

「ユウは流石に警戒心が薄いと思うよ」

「大丈夫。女同士は趣味じゃないから」


それは僕を女と言っているのか?ユウを睨む。

「ごめんごめん、マイ。冗談」

「はいはい。変な気、起こさないでね?」

「寝てる間にハグしてキスとか?」


実は、僕のファーストキスはこいつに奪われている。昔、一緒に寝ていた時にユウの寝相が悪く、抱きつかれた挙句、キスまでされたのだ。


「あれが僕のファーストキスなんだからね?」

「大丈夫。私もファーストキス。それに、嫌ではなかったでしょ?」


確かに嫌では……。

「……嫌だった」


その時はユウはいっつも剣を振り回していたし、活発だったため、僕はユウを男だと思っていた。

それについてはユウも気が付いていて、なにも言わなかったそうだが。


とりあえず、ユウがファーストキスなのはどうでもいい。


「そっか。ごめん。他に好きな人いるんだもんね。何かあったら、お姉さんに相談しなさい。にしても、乙女心を弄ぶのはやめた方がいいよ」

「弄んでる誰かさんには言われたくないね」

「え?マイに乙女心?」

「乙女心じゃない!」


まんまと嵌められた。


「分かった分かった。その話は置いておこう。マイの好きな人は誰なの?」

「うん。全く置いておけてないことは、置いておけないことだね。それをわざわざ聞くほどユウは鈍感じゃないと思ったけど」


異性で誰が好きか聞かれたら、もちろんユウと答える。

僕がそのような勇気を持ち合わせていればのことだが。


「やっぱ、しっかり言わないと伝わらいんだな〜」

「いつか伝わればいいとは思ってるよ。ユウは誰なの?」

「私はねー。って、自分は言わないくせに、私に言わせる気なの?」

「ユウも伝えられてないくせに」


両思いなことくらい分かっているが、まだ僕らは好きだと伝えられていない。



部屋に入って買ってきたものを机の上に置いておく。2人部屋じゃあ買ってきたお菓子食べれないな。


「ああ。重い」


ユウはこの5日間の野宿で、夜襲を警戒して一度も装備を外していなかった。

後ろからはかちゃかちゃと音が聞こえる。勇者が装備を外しているのだろう。


「久しぶりに一緒に風呂入らない?」


ユウからの突然の提案に僕は振り返って言う。


「久しぶりって言っても、何年前のことだよ。そんな不埒なことできません」


それに、その時はまだ男だと思っていたからセーフという、意味のわからない持論を展開して、自分を守る。ちなみに、あの時は一緒に風呂に入ったにも関わらず、女ということに気が付かなかった。


「だいじょーぶ。私が許すから不埒ではない」

「僕が許せないから不埒だ」

「……ああ、そう」


ユウはお風呂入ってくると言って部屋を出て行った。

僕は後でゆっくり入ろう。

それに、ユウが風呂に入ってきてくれると言うのなら好都合だ。


僕はさっき買ってきたお菓子の袋を開ける。


僕がユウのことを女として意識するようになってから、僕は少しどう接すれば良いのか、と戸惑った。しかし、その時からユウのアタックは強くなり、今では受け止めきれなくなっている。ユウの両親に気に入られたのもその時からだったか?


袋の中に入った焼き菓子を、口に放り込む。美味しい。


「「……」」


ユウが部屋の中に入ってきて、気まずい雰囲気が流れる。


ユウは完全にオフの時のゆるいTシャツを着ている。そして、タオルで髪を拭きながら部屋に入ってきた。


勇者という天啓を受けずに、普通に女の子として暮らしていれば、何人もの男の人を落とせただろう。


「お菓子、ずるい」


買ってきたお菓子は思ったより多くて、ユウが帰ってくるまでに食べきれなかった。


ユウに一袋あげる。それで許してくれたみたいだ。ちょろい。


「いつこんなの買ってきたの?」

「さっき。薬草を買ってきた時、道具屋で」


ユウは「へー。これ美味しい。今度私も買お」と言いながら、次々にお菓子を食べていく。

自分も風呂に入ってくるために立ち上がる。一つ疑問が出てきた。


「ここって、共同風呂だよね?」

「そうだよ?」

「一緒に入るってどういう意味だったの?どっちかがそっちにいくって意味?」


共同風呂では、男湯と女湯に分かれていて一緒に入ることはできない。これは、感覚とかという話ではなく、普通のことだ。というのは言わずとも分かることだろう。


「一緒に入ること自体は、私はよかったけど、からかいたかったっていうのが強いかな」

「ああ、本心がダダ漏れだね」

「そうだね。次はどうしようかな」

考えなくていいと釘を刺す。


「共同風呂か……」

「マイにとっては地獄だね」

「見た目どうにかならないかな」

「私は可愛いと思うけど?」


僕が深刻に悩んでいるというのに、そこでからかうのはひどい。あと、可愛いのだろうというのは自分も理解している。というか、してしまっている。


「あと、明日挨拶しにいく王様、重度のロリコンらしいから」

ロリ。それは幼女という意味らしい。そして、ユウ曰く僕は例外なくロリらしい。


「追い打ちかけないでよ」

「ごめんごめん」


 着ていたいかにも魔導師っぽいローブをしっかり被る。変な人に痴漢されないようにするためだ。


「僕も風呂入ってくるから」


 まだ、晩飯前の時間なので、人が少ないことを願うばかりだ。


「オッケー。帰ってきたら食堂に行って、晩飯でも食べよ」

「はーい」




※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※


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