第19話 怒ってなんかない

月曜日、バイトの前に、土曜日あったことを莉子に話すと、顔を真っ青にして謝られた。

「優衣も送って行くべきだった。ごめんね。本当にごめんね。」

「莉子の家はうちとは反対方向だから、送って行くって言われても断ってたと思うよ。」

そう言って、莉子を見ると、目に涙を溜めていた。

「何もなかったし、大丈夫。」

「颯太くんにはちゃんとお礼言った?」

わたしが返答に困っていると、察したのか

「まさかまだお礼言ってないの?」

と言われてしまった。

「それは早くお礼言わなきゃ。」

「うん…それはわかってるんだけど…」

「颯太くんに…嫌われたんじゃないかとか考えてる?」

わたしが黙っていると、莉子が

「ほら、今ここでLIME送りな。返信来た時一緒にいるから。」

と言ってくれた。


それで、


『この前は本当にありがとう』


とメッセージを送った。

すぐに既読がつくと


『連絡が遅いです』


と一言返って来た。

「怒ってる。」

わたしがそう言ってスマホの画面を見せると、莉子が

「これ、怒ってないでしょ。」

と言った。

「ほら。」

莉子に促され、スマホの画面を見ると、先ほどのメッセージの後に続けて


『大丈夫ですか?』


とあった。

わたしがほっとしていると、莉子がスマホを奪って何かを送信した。


「何送ったの?」

スマホを取り返して見ると、


『お礼に何でもします』


とあった。

「何でこんな勝手なこと…」

「優衣の言えないこと代わりに言ってあげたんだよ。」

と莉子が言った。

2人でスマホを見てると、既読はついたもののなかなか返事は来ない。

「大丈夫だって。考えてるんだよ。」

莉子が呑気に言う。

それにしては結構間が長い。


まるで受験の合格発表を待つ間みたいな…


「来ないね?」

さすがに莉子も気にし始めた。

諦めてスマホをしまおうとした時、メッセージが届いた。


『8月16日夜7時30分江品花火大会』

『浴衣?』


「颯太くん、きっと行くとこ調べてたんだよ。それに最後の『?』って…可愛い。」

莉子の方が嬉しそうだ。

「なんて返そう…」

スマホを前に考えていると、また莉子が勝手に書き込んだ。


『浴衣で行きます』


すぐに既読がついたけれど、もう返信はなかった。


莉子を睨むと、悪びれた様子もなく言われてしまった。

「だって優衣は考えすぎなんだもん。」

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