第8話 過去

福山くんがお膳立てをしてくれたので、夏休みでこっちに帰って来てる子を誘いあって、高校の同級生で集まろうということになった。

後日、日時の連絡が来たけれど、夕方6時からスタートで、来れる人が来れる時間に、というアバウトな集まりが実現できたのは、家が中華料理店の福山くんがお店を貸切にしてくれたからだった。



6時少し前にお店に着くと、入り口のところで美結に会った。

「優衣、久しぶり!」

「この前はありがとう。」

「ねぇ、今日って大丈夫なの?」

「うん。福山くんに誰が来るか聞いた。」

「あ、じゃあ良かった。」


お店に入ると、既に男子が3人ほどビールを飲んでいて、ご機嫌になっていた。

「6時からだよね?わたしたち6時に来たのに何でもう飲んでるの?」

美結が言うと、

「俺ら昼から遊んでたから~。」

と、ご機嫌だった。


7時を過ぎてから1人、その後3人、と増えて、結局10人で、高校の時の話や、大学の話で盛り上がった。


「近藤さん、平野さん、今彼氏は?」

酔っ払いの岡元がビールを持ってグラスについできた。

「酔っ払いのおじさんになっちゃってるよ!」

美結が文句を言う。

「そうだ、さっき安永呼んだから、もうすぐ来るよ。」

「来ないって聞いてたけど…」

つい口に出た。


「えー?さっき、平野さんが来てるって教えたら、来るって。」

「余計なことを!」

「美結、その言い方は…」

「大丈夫よ、こいつ酔っ払ってるから。」


安永には顔を合わせたくない。


みんなには申し訳ないと思ったけど、帰ろうと思った時、

「久しぶりー。」

という声と共に、店のドアが開いた。


安永圭介だった。

高校の時とは少し変わっていて、茶色に染めた髪にパーマをかけている。


安永はわたしを見つけて、

「会えて良かった。」

と言って、真っすぐにこちらのテーブルに向かって来た。


わたしは会いたくなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る