首の切れたトカゲ

あんちゅー

それは見えないからこその憧憬

滔々と流れる雄大な川


掛る大きな橋


暗い夜橋を煌々と灯りが照らす


男はその橋を渡っていく


1歩1歩と靴底で踏み締めて


暗い場所から明るい場所へ


まるで特別なものを抱えるように


視線は真っ直ぐ橋の先へと


そこで在れることを楽しみながら



男はある日橋を渡った


次は昼間の明るい橋を


夜中に歩いた時とは異なり


多くの人や車が向こう側へと急いでいる


男は視線を落とし歩いた


その時ようやく気が付いた


踏み締める音に混じったそれは小さな命が鳴らす音


気にも留めない小さな命が


酷くあっさり潰されていた


男はその場で立ち止まり


自分の生を振り返ってから


数刻たって飛び降りた



それは多分夢のようであった事だろう




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首の切れたトカゲ あんちゅー @hisack

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