ワタメリ〜私メリーさん物語〜

タヌキング

メリーさんの物語

「私メリーさん、今ゴミ捨て場に居るの。」


スマホから非通知の電話が掛かってきたから出てみたら、この始末である。

メリーさんを名乗る女性は言うだけ言って、すぐに電話を切ってしまった。

俺は田中と言うんだが、これはもしかして都市伝説のメリーさんの電話だろうか?だとしたら怖すぎる。ジワジワ近づいてきて、後ろに立つ気なのだろうか?

どうせ来るなら早く来て欲しいよね。これだからホラーは苦手だ。

でもなぁ、人形を捨てた覚えは無いんだけどなぁ。俺って物は大事にする質だもん。まぁ、都市伝説って派生するって言うし、その手の類のモノかもしれない。


"トゥルルルル"


はいはい来た来た。出ます出ます。乗り掛かった船だ。こうなったら最後までやってやる。


「私メリーさん、今、〇〇駅にいるの。」


そこまで言うと、また切れる電話。

〇〇駅といえば、隣の駅だな。隣町からスタートしたのか。なるほど、ある程度距離が無いとすぐに後ろに来ちゃうもんな。ジワジワ怖がらせるには、適度なディスタンスは大事かもしれない。

すぐに電話が来るだろうと思って待っていたんだけど、1時間経っても次の電話が来ない。

隣駅からなら5〜10分程度で俺の街に来れるはずだ。もしかして俺はターゲットから外れたのだろうか?もしかして人違いだったとか?

……だったらスタバ行こうかな?


"トゥルルルル"


と思ったら電話来るよねー。そういうもんだよねー。


「わ、私メリーさん。今〇〇駅に居るの。」


あれ?さっきの場所から動いてない。


「メ、メリーさん、今日は帰る。」


えっ?帰るの?どうしたんだ?メリーさん。

もしかして不意打ちパターンかな?

と思ったが、本当にその日は電話来なかった。


次の日

朝から早々とスタバに出掛けて、電話を待つ俺。コーヒーを飲みながらメリーさんを待つなんて、我ながら優雅ですよね。


"トゥルルルル"


はい、来た。近づいて来てるかな?


「わ、私、メリーさん。今〇〇駅に居るの。」


動いてないなぁ、ここからスタートってことかな?


「メ、メリーさん切符の買い方が分からなくて、ひっく、ひっく、もうどうして良いのか分からない。」


えぇ、メリーさん電車の乗り方知らないのかよ。泣いちゃってるよ都市伝説。


「ひっく、ひっく……もうアナタのところまで行けないかもしれない。」


どうしたんだよ都市伝説。諦めんなよ都市伝説。


「じゃ、じゃあ、切るね。」


「待って!!一旦待って!!切るのストップ!!」


「はにゃ?」


はにゃ?じゃないよ。可愛い声出しちゃって、とりあえず理由を聞こう。


「どうしてこっち来れないんですか?」


「ひっく……えっとね。メリーさん切符の買い方分からないの。」


メリーさん萌えキャラかよ。と、言ってる場合じゃない、ここは男として困ってる女性は助けねば。


「切符は券売機か買うか、駅員さんに言えば買えますよ。」


「券売機どこ!!駅員さん誰!?」


これは相当テンパってるな。とりあえず一旦現地に行ってみるか。


「メリーさんそこを動かないで、僕が買い方教えに行きます。」


「うぅ……ありがとう。メリーさんここで待ってる。」


おかしなことになってるのは重々承知だが、とりあえず〇〇駅まで電車で向かうことにした。


〇〇駅に着いたので、メリーさんを探してみることにしたが、考えてみればメリーさんの容姿も格好も知らない。とりあえずメリーさんっぽい人を探してみるか。


10分後、コインロッカーの横でうずくまって泣いている、白いロリータ系の服を着た、ゆるふわ系の茶髪の少女を見つけました。


「シクシク。」


これがメリーさんだろうなぁ。声かけてみよう。


「あの、メリーさんですか?」


「……はい、私メリーさん。」


メリーさんは顔を上げて、そのサファイヤの様に綺麗なブルーの潤んだ瞳を俺に見せてくれた。

俺の胸がトゥンクトゥンクするのは、怪異的なものを見たからだろうか?

それとも、もっと別の……。


「メ、メリーさんに切符の買い方教えて。」


「はっ!!分かりました教えます!!」


こうして俺はメリーさんに切符の買い方を教えた。


「わぁい♪メリーさん切符買えた♪」


無邪気で可愛い。これ本当に都市伝説?


「それじゃ、メリーさん。頑張って僕の家まで来て下さいね。」


「うん、メリーさん。頑張る。」


去り際に彼女から向けられる俺への笑顔。これには流石に俺の顔もだらしなく緩んでしまった。


次の日なると、メリーさんから着信が来た。


「私メリーさん。今あなたの街にいるの。」


よしよし、順調順調。そっから徐々にこっちに来るんだ。


「私メリーさん。ラーメン屋さんにいるの。」


2丁目のラーメン屋だな。良い調子だ。


「わ、私メリーさん。今は金物店に居るの。」


おっと離れたぞ。


「メリーさん、ちょっと道に迷ってます?」


「うん、メリーさん迷った。」


迷ったかぁ。


「安心して下さい。俺がナビします。」


「うん、ありがとう。」


こうして俺はナビを開始し、少しずつだがメリーさんは俺の家に近づいて来た。

そうして三日後。


「私メリーさん。今アナタの家の前に居るの。」


よ、よし、ようやく、ウチの前まで来た。こうなると考え深いものがあるな。

そうして次の着信のあと。


「私メリーさん。今あなたの後ろに居るの。」


俺が振り返るとそこには、駅で見たロリータの美少女の姿があった。

ドヤ顔をするメリーさんが愛おしくて、俺は思わず彼女のことを抱きしめてしまったのだった。


〜18年後〜


「というのが、パパとママの馴れ初めなのよ♪」


「えぇえええええええ!!」


妻のメリーからのカミングアウトに、驚きを隠せないマリー。

それもそうだな。あのメリーさんが自分のお母さんだなんてショッキングだろうなぁ。


というわけで僕の側にはいつも妻のメリーが居てくれる。











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