旅人 点P

村瀬 雪

旅人 点P

小さな村に住む青年、点Pはいつも夜空に輝く星々に夢中でした。

昼であっても、空に雲がかかっていても、点Pはいつも星のことだけを考えているのです。

点Pのお母さんである原点Oは、そんな点Pに呆れつつ、しかし点Pを愛していました。


あるとき、点Pはもっと近くで星を見てみたいと思いました。

そこで点Pは、この世で最も高い場所、点Dへ向かう旅をすることを決意しました。

けれども、原点Oは点Pの身を案じてか許可を出そうとしません。

点Pが一度動き出したら止まらないということを知っていたからです。

許可を出してしまったら、点Pに2度と会えないだろうと…。

しかしながら、原点Oは点Pの決意の固さもまた知っています。

別れも言わないで去ってしまうのではないか、そう考えた原点Oは悩みに悩んだ末に許可を出します。

「行ってきなさい点P、行って夢を叶えてくるのよ」

初めて見る母親の目に浮かんだ涙は、点Pの決意をより確かなものとさせました。

「あぁ行ってくるよ、母さん。絶対に点Dにたどり着いて見せるよ」

こうして点Pは、旅に出ます。星々が輝く空へ、地平線の彼方へと。


「はぁ……はぁ……」

旅を始めてから数日、点Pは休むことなく変わらぬ速度で歩き続けていました。

その身体は泥だらけで、服も靴もボロボロでした。

けれども、そんな疲れを気にも留めず、ただひたすらに星を思い続けました。

そして遂に点Pは点Dの元にたどり着きます。

「あぁ……星がきれいだなぁ……」

点Pが見上げる夜空には、数えきれないほどの星が輝いていました。

「僕はついに、ここまでたどり着いたんだ。僕の夢は、やはりここにあったんだ」

点Pは星空を見上げたまま、その目から涙を流しつつ微笑みました。

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旅人 点P 村瀬 雪 @yuki0sikase

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