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森野くんの家があるアパートにも、その近くの公園にも、森野くんはいなかった。
(薺はブランコに乗ったりして、しばらくの間、そこで、ずっと森野くんの帰りを待っていた)
やがて、薺は森野くんを探すために移動をする。
でもどこにも森野くんはいなかった。
まるで森野くんは私の世界から、突然、消えてしまったみたいだった。
やがて空は暗くなり始める。
季節は冬で、まだ時刻はそんなに遅い時間でもないのに、世界は夜になろうとしていた。
……空がどんよりと、暗い。
そういえば、今日は確か、もしかしたら今年初めての雪になるかもって、少し前の天気予報で言っていた。
もともと、山間にあるこの町の天気は変わりやすいのだけど、朝、晴れていたから、天気予報は外れたと思っていたのに……。
びゅー、と冷たい北風が大地の上を吹き抜けた。
その風に薺の長く美しい黒髪が揺れている。
その風の冷たさに、ぶるっと一度、白瀬薺はその体を震わせた。
薺はもう一度、あてもなく町の中を、森野芹くんの姿を探して、はぁ、はぁ、と白い息を吐きながら、走り始めた。
薺は今日、絶対に森野くんに会うんだ、と今朝、森野くんの手紙を読んだときからその心に決めていた。
今日、この日に、森野芹くんに、私も、『あなたのことが好きです』って伝えるんだと決めていた。
だからもう、森野くんを探す、薺の目に、薺の手に、薺の足に、……薺の心に、迷いはない。
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