サイレント･シティ

Prolog

カナシミの始まり

　西の機工大国『ガルキウス』が全世界に向け宣戦布告を発したことから始まったその戦争は、大地の大半を焼き尽くしていた。

　ガルキウスの侵攻に抗うべく結成された東諸国の十五国連合は、大国を相手に善戦を繰り広げていた。

　しかし、戦争末期になると劣勢に追いやられていたガルキウスは、戦況の挽回を図るための最終手段－－－禁断の最終兵器「ソニック･ディストラクション･システム(SDS)」を完成させた。

　それは超音波であらゆる生命体や、物質を構成する原子までもを破壊するという、最凶最悪の兵器であった。

　その報せは人々に絶望と混沌を与えていた。だが、東の魔導小国『ジャピニオン』に英雄が現れる。

　そのSDSに対抗すべく、彼はあらゆる『音』を無効化する「ソニック･ジャマー･メカニズム(SJM)」を開発し、それを作動させたことによりSDSの脅威から世界は救われた－－－。

　ひと時の救済に安堵と喜びに湧く人々だったが、戦争の終結と共に人類は多くのものを失っていた。

　愛する人の声

　美しい鳥のさえずり

　木々の間を抜ける風の音

　その日から約1000年、世界は未だ静寂に包まれていた－－－。