「才」「害」

うよに

(1)順風満帆

         ***

 順風満帆、まさにその言葉通りの人生を送っている。私の周りにはたくさんの友人がいて暖かい両親もいて少し我儘な妹も犬もいて。そして何と言っても私には誇れる彼氏がいる。

 私は恵まれすぎている。

「お~い、さき、何ぼっとしてんだよぉ」

 そんな間延びした声が耳に届いたと同時に軽い衝撃が頭を襲う。

「痛いってばっ」

「わりい、わりい、叩きたくなっちゃって」

「お前はSかっ」

 そんな他愛もない会話を繰り返しながら彼――私の彼氏の隼人はやと――と一緒に昇降口を出ると眩しいぐらいの真夏の太陽が顔を覗かせていた。額の汗を拭う彼の仕草が妙に様になっていて、思わず吹いてしまった。そんな私に頬を膨らませあからさまに早歩きをする。そんな彼の背中に陽が射しキラキラと輝いていた。

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