少女が人肉を食べたので、死神ちゃんが授肉します

 いや驚いた。

 確かに死神を妄想をするようになった人間はそのうち人肉を食うと、生まれたときに説明されていた。


 だがこうも自然に食べようとされると驚く。

 心の準備ができていない。


 少女は包丁を使って骨から肉を剥がしていく。

 それを一口大にきり、水を張った鍋で煮込む。

 適当に煮たせいでただでさえ食べにくそうな肉がさらにひどくなっている。

 硬くパサパサで食べれたものでないだろう。


 それでも少女は軽く塩を振って食べた。

 まずいらしい。

 なぜいけると思ったか聞きたい。


 それと美味しく調理して食べさせたい。

 今、少女が人肉を食べた。

 だから明日には肉体が手に入っているはずだ。

 あと少女と仲良くなるための臨時給与も。


 少女はお腹が空いたらしく冷蔵庫を漁り始めた。

 だが入っているのは足と調味料くらい。

 食べれそうなものはない。

 棚を調べても何もない。

 かわいそうだ。


 すると少女は携帯電話で誰かに連絡を取った。

 2時間ほどでやってきたのは小太りなおじさん。

 確か少女が出会い系サイトで餌を探している時に見つけたマゾ犬だ。


 少女はそれを良い感じに拘束すると包丁を持ってきて腕に突き刺した。

 赤い血が流れ出る。

 少女はその血を直接舐めた。

 幸せそうだ。


 口元を赤く染めながら血を舐め気付けば腕を喰らっていた。

 マゾ犬はいつしか絶命している。


「あー! 美味しかった」


 絵面にはかなり問題がある。

 それでも少女が幸せそうなら良いのだ。


 少女は心ゆくまで血を味わったようだ。

 ノコギリをとってきて、食べやすそうな片腕と足を良い感じにきり分けて冷蔵庫に入れた。

 胴体は腹を開いて内臓を取り出し、ガーゼを使って血を搾りとった。


 残ったおじさんの残骸は裏山に捨てた。

 美味しいものを食べて元気が出たらしい。

 さっさと土を掘ってさっさと埋めてしまう。

 いつも土を掘る間に魂を回収しているのだが、掘り終えるのがはやかったので回収し損ねるかと思った。


 なんとか回収し、夜にきちんと提出した。

 ここまでは昨日と同じだったが、今日は肉体の作成がある。


 適度な丸顔に大きめの目とそれに合う眉。

 それから高めの鼻と整った唇を追加する。

 肌は真珠のような白を。

 目は暗闇のような黒を選んだ。


 脚と腕はスベスベにし、少し胸を盛ってもらう。

 もちろんウエストは細くしてもらった。

 目と同じ色の髪の毛を腰のあたりまで伸ばす。


 細く長い指とやわらかいてのひらを腕のさきに。

 手はどちらかといえば大きめだ。

 足も長めの指で土踏まずは高く幅は狭く。

 それでもサイズは大きめだ。

 ようやくできた裸体を鏡で確認する。

 大丈夫、ちゃんと可愛い。


 続いて衣装だ。

 いつものお洋服は重すぎる。

 もう少し動きやすいように軽くしたい。


 それでもふんわり膨らんだスカートは譲れない。

 袖はふんわりと膨らんだものをセレクトした。

 あと胸元にはリボンをつけた。

 うん、可愛い。


 靴は皮のブーツ。

 鞄は手で持てるように変えた。

 衣装に袖を通す。

 前より軽いうえに可愛い。

 文句なしの100点満点だ。


 これなら少女の心を打ち抜ける。

 恋人になれると自信が出てきた。


 肉体をもらってすぐは存在は安定しない。

 死神のことを知っている人が少ないからだ。


 この世のものは認識されることで存在している。

 でも死神には認識してくれる相手が少ない。

 なので恋人を作る。

 愛情という大きな認識をもらうのだ。

 そうすれば存在が安定する。


 私の場合、狙うべきは少女だ。

 恋仲になるための努力と苦労の日々が始まった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る