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Column1 「敷居が高い」を「難度が高い」と捉えるのは誤り?
今回は、「敷居が高い」について取り上げようと思います。
☆
——高級レストランは、敷居が高くて入りづらい。
「敷居が高い」という慣用句は、上記の例文のように「高級なものを扱っていたり、マナーをきちんと守らなくてはいけないような場所で入りづらい」など、「難度が高い」というときに使うことがあるかと思います。
しかし、これは本来の使い方ではありません。
「敷居が高い」は、「不義理や面目のないことをしているので、その家に行きにくい」(『明鏡国語辞典 第三版』より引用)というのが本来の意味です。
「敷居」とは、戸や障子を乗せて、開け閉めするための溝のある横木のことです。家や部屋に入るときにそれを
しかし、人々の間では「難度が高い」という誤用の方が、多く使われているようです。
文化庁が発表した令和元年度の「国語に関する世論調査」では、本来の意味である「相手に不義理などをしてしまい、行きにくい」と捉えている人が29.0%、本来の意味ではない「高級すぎたり、上品すぎたりして、入りにくい」と捉えている人は56.4%でした。
このように本来の意味ではない方の使われ方が広がってきていることから、辞書でもこの使い方を認めるものが増えてきました。
整理したものは下記の通りです。
●「敷居が高い」を「難度が高い」と使うことを認めている辞書
『明鏡国語辞典 第三版』『三省堂国語辞典 第八版』『三省堂現代新国語辞典 第六版』
●「敷居が高い」を「難度が高い」を俗語として捉えている辞書
『新選国語辞典 第八版』
●「敷居が高い」を「難度が高い」と使うことを誤りとしている辞書
『大辞林4.0』
●おそらく「難度が高い」と使うことを認めていない辞書(⇒言及されていない・用例がないため)
『新明解国語辞典 第十版』『旺文社国語辞典 第十一版』『学研現代新国語辞典 改訂第六版』『岩波国語辞典 第八版』『デジタル大辞泉』『精選版 日本国語大辞典』
本来の意味ではない使い方を認めているものが三冊ありますね。まだ認めていないものも多いですが、それでもじわじわと認められてきているのかなと思います。
また『三省堂国語辞典 第八版』には、「敷居が高い」の項目に「①義理をかいたりして、その人の家に行きにくい」「②近寄りにくい」「③気軽に体験できない」と三つの意味の記載があり、そのあとに「①は江戸時代から」「②は戦前から」「③は1980年代あった用法」であると書いてありました。
②、③が「本来の意味ではない」ものですが、それなりに歴史があるのが分かりますよね。
辞書に新しく取り入れられる意味は、比較的歴史があることも多いです。もしかすると、今後も他の辞書で認められていくかもしれません。
どちらの意味として使うかは作者さん次第かと思いますが、皆さんは「敷居が高い」を本来の意味として使うでしょうか。それとも新しい用法として使うでしょうか。
◇掲載場所◇
『NIHONGO ‐Ⅱ‐』2022年―6月―Column2
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