割り切れない日本語

Column3 「傍」と「側」の違いとは？

　今回は、「傍（そば）」と「側（そば）」のニュアンスの違いについて取り上げようと思います。

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　皆さんは、「そば」と読む、「傍」と「側」の漢字を書き分けて使うことはあるでしょうか。

　……と、質問しましたが、もし使い分けていなくとも問題ありません。国語辞典を確認した限り、ほとんどが二つの書き分けについて言及していなかったからです。

　ですが、使い分けができないわけでもありません。二つの漢字には微妙に違ったニュアンスがあるのです。『漢字の使い分けときあかし辞典』で調べてみると、次のようなことが書かれていました。

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　一体化していると思えるほど近い場合には「側」を用いる。

　それ以外の場合は「傍」を用いる。

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　これだけですと分かりにくいかもしれないので、一つ例を挙げましょう。

「傍」には「傍人（ぼうじん）」という熟語があります。

「側」には「側近（そっきん）」という熟語がありますね。

　この二つには次のような意味があります。

「傍人」……「そばに居る人・そのことに直接かかわらない人」(『新明解国語辞典　第八版』より引用)

「側近」……「団体の長や貴人などのそば近く居ること(人)」(『新明解国語辞典　第八版』より引用)

　見比べてみると、「傍人」には「近くにいるけれども関りがない」のに対し、「側近」は主人に忠誠を誓い、身の回りのことを行ったり、手助けしたりするわけですから、「近くにいて関わり合って」います。

　このように見ると、「一体化していると思えるほど近い場合には『側』を用いる。それ以外の場合は『傍』を用いる」という意味が分かるかと思います。

　試しに例文を用いて、ニュアンスの違いを確かめてみましょうか。　

①学校の傍にあるパン屋に行く。

②学校の側にあるパン屋に行く。

　上記の説明を踏まえ、①と②を読んでみてください。

　すると①は「学校の近くにあるパン屋」(⇒隣ではないかもしれないけど、数分歩く距離にはある感じ)という印象ですが、②は「学校のすぐ隣にあるパン屋」(⇒限りなく近い感じ)という風に捉えることができるかと思います。

　……と、ここまで説明してきましたが、冒頭にも書きましたように、多くの国語辞典ではこの二つの漢字の使い分けは特別取り上げていません。そのため、使い分けをしないのであれば、どちらか一方に統一して書いてよいと考えます。

◇掲載場所◇

『NIHONGO』2022年―5月―Column2