ロスト・グリモワ 〜賢者の魔法を受け継いだ僕は、幸せになろうと思います。

松龍

第1話

 またか。


「いくぞ、炎よ、唸り焼き尽くせ! ファイアボール!」


 右手に炎の球が当たる。熱と痛みで頭がどうにかなりそう。


「へへっ、じゃあ、俺は、雷よ、ハヤテのごとく打ち抜け! ライトニング!!」


「ぎゃあああ!」


 足に電流が流れる。焼けこげた匂いが部屋に充満する。


 僕、ロレンツォ・レッドウィザードは腹違いの兄、ヤロカスー、ヤロクソーに魔法の実験台にされている。


 レッドウィザード家は侯爵家だ。マジーコ王国有数の資産家であり、軍務閥のトップに君臨して久しい。


 そんな家に僕は生まれた。妾の子として。そして、魔術が使えない「無能」として。


「次行くぞ!! ファイアトルネード!!」


 僕の全身は炎の渦に飲み込まれる。のして、全身は大火傷だ。


「次、俺。ヴァイオレットライトニング!!」


 紫色のイナ玉が僕の体を撃ち抜く。僕の体はあちこちが炭化している。


「なあ、合体魔法、やってみねえか?」


「いいね!、何にする?」


 正直、僕の体はもう限界だ。後は死ぬしかないと思っている。


「や、め。」


 もう言葉を発することもできないらしい。せっかくもらった新しい人生がこんなことで終わるのか。女神様、あなたは嘘つきですね。


「今世こそ、幸せになれるようにしますから!」


 そう言ったじゃないですか?


「「ライトニングバースト!!」」


 この人生も最悪だったな。ただ、幸せになりたいだけだったのに。






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