見つけられないから。

第21話 途切れたから。

「違うよ」


 流架くんの問いにそう答えた。


「だって...よく、こそこそ話しているじゃん!」


 流架くんは泣きそうな顔だった。


「えっ、あれは...」


 僕は何も言えないから口をモゴモゴとさせた。


「やっぱり...。言わないじゃん」


「うん。そうだね...。言えない」


 僕は認めるしかできない。


「海里はなのにっ。ズルいよ」


「僕の恋が簡単な訳ないじゃん!」


 僕はつい声を張り上げてしまった。


「え?」


「僕がいつも一番最後じゃん」


 ...この恋も。


「最初のこともあるじゃん。背の順とか」


 流架くんがからかい口調で言った。


「それは嬉しくないっ!」


「まあね~」


「でもさ、すれ違っているだけな方が簡単だよね」


 ボソッと言った流架くんの言葉が聞こえてしまった。


「すれ違っている、って何?」


「雷斗が鈍感なだけだよ。海里は気にしなくていいよ」


「そっか...。分かった」


 また、僕に教えてくれない。


ーー


「なあ、朔。今度、出掛けない?見たい映画があって」


「いいよ~」


──えっ?


 この時期の映画って、僕と毎回見に行っていたあの映画のシリーズじゃないの?


 どうしたの、らいくん。


 僕とらいくんのじゃなかったの?


 僕はもう泣きたいよ。


ーー


「ねえ、海里。映画の無料券をもらったから、土曜日に行かない?」


 そう言いながら、お兄ちゃんはパンフレットを見せた。


「いいよ! じゃあさ、これにしよっ」


 やっぱり、らいくんと一緒に行っていた映画は指差したくない。


 だから、最近流行っているやつを指差した。


「ええっ、俺はこっちが良かった...」


「それ、怖いやつだから、やだぁ。お兄ちゃんだけで見てよ~」


「む~」


 お兄ちゃんは少し拗ねながらも、やっぱり“いいよ”って言ってくれた。


ーー


 今日は土曜日。


 お兄ちゃんとの約束の日。


 僕はお兄ちゃんの車に乗った。


 お兄ちゃんはあんまり運転しないから、ゴールド免許だ。


 すぐに免許が無くなりそうな気もするけどね。


「ねえ、お兄ちゃん。映画見たらさ、服も買いたい!」


 運転席に向かって話す。


「いいよ~。今日は甘えん坊だね。何かあったの?」


「ん~。お兄ちゃんに甘えたい気分だった信用したいだけ」


 僕が一番、信じられる人だから。


 兄弟だから訳ないでしょ?


「へへっ。海里かわい~」


「でしょ~。僕はかわいいもんっ!」


 笑いながらいつものように話す。


 らいくんのことなんて忘れてしまいたい。


 僕を裏切った選ばなかったって認めたくない。



──らいくんのバカ...。


──ずっと君を想う僕もバカ...。

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