第17話 快凪side いらないから。

 俺は藍斗先生に原稿用紙をもらった後、バスケをするために歩いた。


 とはいえバスケ部が俺の居場所な訳ではない。


 俺の居場所だと思えるのは俺を認めてくれる生徒会と教室...。


 ああ、教室も居場所じゃなくなっているな。


 家はから居場所と思えば居場所なのだろう。


──ダンダン


 体育館にバスケの音だけが響く。


 今は他の部員はいない。


 ミーティングかな。


 相変わらず煙たがられているな。


 俺が夢丘最強だから仕方ないのかも知れないけど。


 今でも普通にケンカは出来る。


 朔に恋してから、とは思わなくなったけど。


──ポン


 ダンクが決まった。


 集団競技だから一人じゃつまらないのに。


 そんなことを思いながら、俺はバスケに集中しようとする。


 ざわざわしてきたな。


 あいつらが帰って来たのかな。


「なあ、夢丘の夢殺しさん。俺がその称号を奪うから、戦え」


 はあ。


 一年生かな。


 俺を筆頭にするようにこの学校は治安が悪くなっている。


 仕方ない。


「分かった。手短にしろよ」


「ああ。お前がすぐ音をあげるから早いだろうよ」


「ふーん」


 そう言いながら殴りかかってきたそいつを避けて、後ろから殴る。


「おい。何するんだ」


「どうかした? あっ、お前が音をあげたのか」


「違う。また出直すだけだ」


「あっそ。一昨日来な」


「ばーか」


 そんな捨てぜりふで帰っていった。


 いや、早すぎない?


 おもろ。


 その一部始終を──に見られていたとは知らずに俺はバスケを再開した。


ーー


「快凪。俺らが使うから、帰ってくれない?」


 キャプテンが話しかけてきた。


 俺は強いから、試合にだけ出してくれる。


 試合に出すなら練習も参加したいけど。


 俺が参加しても文句は言わないくせに、俺が元ヤンだってことで怖がる。


 キャプテンがなぜか知っていたんだ。


 それで何も上手くいかない。


 バスケはチームスポーツなのに。


 それがムカつく。


「分かりました。今度の試合はいつですか?」


「えっと、来週の日曜日。また、ポジションはSFで頼むわ」


 スモールフォワード。


 チームを関係なしにただゴールを入れたらいい。


 そんな考えなんだろう。


 だから、俺がこのポジションなんだ。


 俺にここが合っていないことが分かっていても、バスケが好きという気持ちが邪魔する。


「了解です」


 そう言って俺は体育館を出る。


 バスケをやりたい。


 そんな気持ちを誤魔化して。


 場を読むのは得意だから。


──俺は今日も何も言えない。


 でも、荒れていたヤンキーだったことに後悔は無かったんだ。


 があるから。

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