最後だから。

第1話 むくわれないから。

──わかってたんだよ。


──あの日、一本線が見えた。



『久しぶり! 二学期からそっちの学校に転入しまーす!』


 流架るかくんからラインがきた。


 このときは嬉しかったんだ。


 もう大丈夫って思ってた。


『やったー! 待ってるね。同じクラスになれますように』


 すぐにラインを返した。


 叶ったらどうなるかなんて考えずに願い事をしてたんだ。



「らいくん!」


 公園に先に着いていた僕の好きな人─雷斗らいと─に話しかける。


 ゲーム片手にベンチに座っていた。


「やっほー。海里かいりは元気だな」


「うん。あのね、流架くん二学期から転入してくるって」


「え?」


僕たちの学校私立 夢丘 中高一貫男子高校にだって」


「やった」


 ボソッと言ったその言葉が聞こえてしまった。


「流架くん変わったのかな。全然会ってないよね。小学校以来?」


「そうだな。中学から会ってないから五年ぶりか」


「うん。楽しみだね」


「ああ。じゃあ、ゲームしよ」


「もちろん」


 まだ、好きなのかな。


 流架くんのことずっと好きだったよね。


 僕の気持ちは隠したままでいいのかな。


 そんな気持ちのままらいくんと遊ぶ時間は過ぎてった。


 あっという間に帰る時まで時間が過ぎていた。


「明日はゲーム機持って俺んちで遊ぼーぜ」


 帰り道のこの会話が、一番僕ががんばる時間。


 らいくんと話していたいから。


 今日もたくさん話して、僕のこと、好きになってほしいな。


 なんて思いながらまた話す。


「いいよ~。寝坊しないでよね」


「寝坊するのは、海里だろ」


「そうだった」


「おいっ」


 そういってらいくんが僕の頭を小突く。


 いつものことなのに、嬉しくなる。


「じゃあな」


「うん。また後で~」


「今日も家来んの?」


「もちろ~ん」


 Vサインで答える。


 家は隣だし、親も仲いいからよく家に行く。


 今日も親は仕事。


 お兄ちゃんも残業入ったみたいだから、らいくんの家に行ける。


 このラインが来たときの嬉しさはらいくんは知らないんだろうな。


「またね~」


「ああ」


ーー


「はー」


 無意識のうちにでるため息にムカつく。


 流架くんはらいくんと会ったら、付き合うのかな。


 らいくんイケメンだもんね。


 でも、流架くんに会いたい気持ちもある。


 そんな僕がムカつく。


 らいくんに“かわいい”とも言われなくなったな。


 小さい頃は言ってくれたのに。


 僕のことなんとも思わないのかなあ。


 また“かわいい”って言って欲しいな~。


 “かっこいい”もいいけど、らいくんに言ってもらいたいのは、“かわいい”なんだよ。


 そんなこと考えてたら、もうらいくんの家に行く時間になっていた。

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