第5話 3日目の研修
2日目の研修も特段変わったところはなく、普通に進められた。
会場が別になったことと、参加者の年齢が、極端に若い人とベテランに偏ったのは、何か意味があるのだろうか?
グルー別に着席する丸テーブルだけが置かれたホールは、殺風景な何もない場所だった。
一グループ10人ほどのテーブルが20台並んでいる。僕のグループには、片桐先生もいた。
研修内容は、いたって平凡だった。生徒指導について課題を与えられ、グループで協議し、方策を練っていく。途中でグループごとに発表があり、指導官から全体講評を貰う。
そして、今日も最終講義が終わり、会場を後にする時、一枚のカードを貰った。
「北野先生、そのカードは明日、この建物に入る時に、セキュリティーを通すんだ。自分がどの部屋に行くかが、モニターに表示されるから指示に従えばいい」
「はい、分かりました。でも、明日は同じ建物なんですね…………ということは、僕はやっぱり最終段階までは行けなかったという訳ですか?」
僕は、昨日のように、また別会場になれば、最終の魔法教室に参加できると考えていた。
「ん?そんなことは無いぞ。明日は、全員この会場なんだ。でも、部屋が違ってくる。そこで、どんなことをするかは、明日でなければ分からないんだ…………すべては、明日さ」
「そうなんですか?……じゃあ、まだ希望はあるんですね!」
「まあな。…………たぶん、明日は別々だ。しっかりやれよ!……じゃあ」
「あれ、先輩!今日も晩ご飯をご一緒にと思っていたんですが……」
「ああ、すまんな。俺は、少し用事があるんだ……家族への土産もな。すまんな」
「あ、いえ。それでは、明日、終わったらメールしますから、最後の晩ご飯は、一緒にどうですか?」
「そうだな、待ってるよ。じゃ、明日頑張ってな!」
片桐先生は、そのままホテルとは反対方向へ歩いて行った。仕方がないので、僕は一人で夕食を済ませて、ホテルへ帰り、その晩は早めにベッドに潜り込んだ。
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次の日の朝、僕は片桐先生のメールで起こされた。
「いっけねー、寝坊したかな?…………」
・ ・ ・ ・ ・
「いやー北野先生……良く、寝てたね……何度メール送っても返事がないから焦ったよ、あははは……」
「すみません、すっかり寝坊したみたいで…………夕べは寝るのが早かったんですけどね」
「まあ、今日は日曜日だし、帰りの飛行機も1時過ぎだ……午前中はお土産を探すだけだから……職場にもお土産はいるだろう?あははは」
「そうですね…………」
2人でホテルの朝食バイキングを回りながら、そんな話をした。ただ、何となく忘れものをしているような気がする。……どこか、頭に引っかかるものがあるんだ。
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