今から私は、人を殺しに行く.docx

最悪

2026/3/19

※この文章の所有権はこのデータを最初に見つけた者が所有するものとする。ネット上にあげるなり出版するなり自由にしてもらって構わない。


この文章は私の研究の過程や発見、背景をざっくりと纏めた報告書である。

この文章が世に出ているということは、私がこの文章をデータ化し、USBメモリとして適当な場所に埋めていたのを誰かが拾ったということだ。


時間gないのでさっさと本題に入ろう。


私がまだ幼い頃、私の両親は死んだ。

その日は両親の結婚記念日だったため、私は内緒でプレゼントを買いに家を出ていた。

そして私が家に帰ってきたとき、両親が何者かに刺されて死んでいたのだ。

当時、犯人の動機は全く分からず、警察の捜査は難航し、挙げ句の果てに奴は自殺したことが分かった。

それに私はひどく絶望し、残りの人生には何があるのか、どうすればこの無念が晴らせるのか、そう思っていた。


事の発端はネットニュースだった。

「未知の物質発見!!タイムマシンも可能か!?」という記事。

自殺も考えてた私は、犯人に対する憎悪からか、研究にのめり込んだ。

そこから十数年の時を経て、なんと私はたった1人でタイムマシンを完成させることに成功したのだ。

自分で言うのもなんだが、開発過程で私はおそらくノーベル賞級の発見や研究をしていただろう。

しかし、それらを世に出すつもりはなかった。

たとえそんなもの発表して金持ちになったところで何も満たされないからだ。

ただ私の人生を狂わせたあの忌々しい犯人を、自殺される前にこの手で、なんとしてでも殺したい。いつしかそれが私の研究の動機になっていたのだ。


結論から言うと、タイムスリップは成功した。

目が覚めたのは当日の午後、場所はおそらく家の最寄りの公園、幼い頃の私は既に家を出ていた時間だった。

私はなんとか記憶を辿って自宅に着き、生きている両親と十数年ぶりに再開した。

その後、時間はかかったがなんとか私はこれまでの経緯を両親に伝えた。

私は十数年後のあなたたちの娘であること、

この日にあなたたちは何者かによって殺されるということ。

とてもすぐには飲み込めないような内容だったが両親は私に面影があると言い、全て信じてくれた。

2人は私のことを受け入れてくれて、なんなら嬉しそうにしていた。

すると気づけば、両親に再開した感動からか、犯人に対する私の憎悪はすっかり消えていた。

奴はどうせ自殺するのだし、私が奴を殺して殺人犯になるよりこのまま今の私と両親と当時の私で幸せに暮らしていけば良いじゃないか、とそう考えた私は、あることを思いついた。

両親を家から連れ出してどこかへ行き、本来犯人が来るはずだった時間まで待機しておけば誰も死ななくて済むのではないか。

過去の私が家に帰ってきて両親の死体を発見したのは確か18時前後。

すなわちそのくらいの時間に家に戻ればよい。何事もなく、両親が生きていた元の日常に戻れる。そう思っていた。


実際にわたしは思いついたそれを実行した。

両親を外に連れ出してからある程度時間が経ち、過去の話に夢中になっていたその頃。

ふと時計を見ると17時57分であったため、私は両親にもうそろそろ帰ろうという提案をしようとした。

しかし、何故かその後の記憶がない。

気がつけば、ちょうどタイムスリップしてきたときの時間、場所は先程の公園に戻ってきていたのだ。

何が起きたのか分からなかったが、それだけではなかった。

この「リセット」のような現象は奇妙なことに何回両親を外に連れ出しても起こった。

両親は繰り返している意識はないらしく、ただ私だけがまるでゲームの世界に入り、「セーブデータをロード」のボタンを押されていうような感覚だったのだ。


そこで私はタイムマシンに不備があったのかと思い原因を探っていたが、何回か繰り返しているうちに、あることに気づいた。

リセットされる時間が決まって17時57分だったのだ。

この時間と言ってピンと来るのは、過去の私が両親の死体を発見したその瞬間であり、これはすなわち過去に私が体験してきた世界と今私の意識があるこの世界とが明確に相違した時である。

わかりやすくSFなんかでありがちな言葉で言えば、

「タイムパラドックス」が起きた時にこの現象は起きるということに私は気づいたのだ。

つまり、私がこのループを抜け出そうと思ったら「両親が死ぬ」というこの過去を変えることはできない。

私はとんでもない見落としをしていたのだ。

しかし、それどころではなく、私の研究にはもう一つの見落とし、致命的なミスがあった。

この装置の原理は、飽和した現在意識を過去の同一世界時空間軸上に順転移し次元写像をとる、というものであり、これが不可逆的な変化であったということだ。この文章が世に出ている時代の科学がここまで進歩していない可能性があるのでわかりやすく言えば、一度過去に行ってしまうと、もう現在に帰ってくることはできない。

つまり、このループを抜け出すために、今私がやるべきことは、2つ。まずは、


今から私は、人を殺しに行く。

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