夢判断
伊藤ダリ男
第1話 幹太の相談
「ちは~、先生」。
「ん?幹太(かんた)ではないか。今日は庭の仕事を頼んだつもりはないが・・・」
「へえ、実は先生に折り入ってご相談がございましてね・・・おっ?・・先生、
何を書いていなさるので?」
「これは、エゲレスの文字で書かれた本。今は、それを和訳しているところだ」
「流石は、西洋学の先生だ。・・・でも、エゲレスの文字というのは、ウンコの
横たわったようにみえますねぇ」
「それを言うなら、ミミズの這ったような、と表現すべきだろう。
因みにミミズはエゲレス語でworm(ウォーム)といい、ウンコは・・・
feces(フィーシーズ)と言うのだ」
「ほぉ~、ミミズの「うおーむ」は、こりゃぁ温かい気がしますし、ウンコの
「ふぇ ーしーず」は、屁をしないっつう感じがしますね」
「何を馬鹿なことを・・・ところで、何用で来たのかな?庭師のお前が私に
相談となれば、見晴らしの良い物件が見つかったので、この辺で別荘でも作り、
その庭を自分にやらせてもらえないかなんてところだろ?」
「いえ、とんでもねえ、相談と言うは、実はアッシの夢のことなんで」
「お前の夢のこと?」
「へえ、最近妙~な夢を見るんで・・・で、先生にその意味を説いて貰えねぇかと
こう思いまして・・・。」
「それは、近頃、巷(ちまた)で流行っている夢判断を私にやって欲しいと言う
ことかね?」
「へえ、確かにその夢判断なんですが・・・。
時々アッシもねー、人の夢判断をやったら、メチャ当たるってんで、・・・
まあ自分で言うのも変ですが、・・・ここいらじゃ評判なんすよ・・。・・・
ところが、てめえの夢と来たら、どう扱えばよいか、どうもアッシの手には
負えねえてぇ感じ・・・・で、先生からお知恵を拝借なんて思いまして・・・」
「帰れ、帰れ、私は人の夢に付きおうてる暇などないわ」
「そんなこと言わないで先生・・・先生ったら・・ねえねえ先生・・せんせい
・・お願いだから、後生だから・・殿様・・・・・・カ・ミ・サ・マ・・
・・・この通り・・」
シッタモンダの末、拝む幹太の粘り勝ち、渋る先生の根負けと勝負は付いたが、
先生も只負けるわけにもいかない。
「では、私の昨日の見た夢を、お前はどのように説明するのか、それに私が納得
したら、お前にお前の見た夢の謎解きをしてあげよう」
先生の見た夢と言うは、大きな鯉を釣ろうと沼で朝から晩まで釣りに興じたが、一寸ほどの小魚が一匹釣れただけでがっかりして帰宅したと言うもの。
「さあ、この夢判断は如何に・・・」
「如何にといわれても困っちゃったなあ。つまり先生・・・言い難いんですがね、
・・・・鯉というのは、男性のシンボル、あれですな。・・・魚が小さい
というのは、先生のあれは小さく、先生は、それにコンプレックスを感じて
いらっしゃるのですよ。・・まあ、そんなところで、図星でしょ?」
「ぶ、無礼者!」
先生は、いきなり刀に手を掛け、そして抜いた。
「ひえ~、殺される」
顔を手で覆う幹太に向い、無礼討ちにしようとした一度は、刀を構えた先生
だったが、天井をじっと見つめ、漸く怒りを鎮めることが出来たのだった。
そして落ち着きを取り戻すや、刀をポトンと床に落とし、頭を垂れるのであった。
「いや、すまん。その通りだ。・・こりゃあ驚いた・・・恥ずかし ながら、
お前の言う通りだ・・」
「びっくりしたなあ。斬られると思いましたよ。・・冗談でもよして下さいよ。
アッシはまだ死にたくありゃあせんから・・・。
ところで先生はアッシの夢判断を何となく納得したみたいですが、それなら、
今度はアッシの夢の謎解きをやってもらいますかい?」
「しょうがないな。約束だからな・・・ではまあ、お前の見た夢を話してくれ」
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