神官ミリアは神の言うことしか聞きません 7

「この寂れた教会を信者でいっぱいにするには……うーん、じゃあまずはお姉さんのこれまでの布教方法の見直しから始めよう。ここが寂れてるのって、結局ミリアさんの布教が下手なのが原因だしね」


 子供に化けた俺は、ミリアと作戦会議をしていた。


 クィーラ教の信者を増やし、この教会を人でいっぱいにするにはどうすればいいのか。

それを二人で考えていた。


「あらあら子羊さんたら手厳しいのね……それで、わたしはどうすれば?」

 ミリアは真剣に俺の話を聞いている。


「じゃあ、これから僕が教会をふらりと訪れた人の役やるから、お姉さんはいつも通りにクィーラ教に勧誘してみてくれる?」


「ええ、わかったわ!」


 俺はいったん教会の外に出て、再び中へ入る。


 初めて教会を訪れた人をイメージし、俺はキョロキョロとあたりを見回す。


 そんな俺に笑顔で歩みよってくるミリア。


「あらあらどうもこんにちは。迷える羊よ、今日はどんなご用なの? いいえ、答えなくてもいいの。私にはちゃぁーんとわかっているから。悩めるあなたは女神クィーラに救いを求めてやってきたのね。そうに違いない! さあ、こっちにいらっしゃい。私が女神クィーラの尊い教えをちゃーんとあなたに伝えてあげますからね」


 息継ぎもせずにまくし立て、俺を説法室へと引っ張っていこうとするミリア。


「ストップ……! お姉さんストップ! 全然だめだよ!!」

 俺は演技を止めた。


「あら……私なにか失敗してしまったかしら? 私なりに一生懸命布教しようと……」


「布教っていうか通報案件だけどね今のは……」

 俺は深く息を吐いた。

「……お姉さん、とりあえず一気にしゃべるのやめようか。怖いよ」


「あらあらそんな……だって、私伝えたい事がいっぱいあるの。クィーラ様の教えを一つでも多く、迷える羊たちの耳に入れてあげたくて……」


「相手が聞いてくれなきゃ意味ないでしょ。――お姉さんは人の話をもっと聞くようにしようよ。自分から話すんじゃなく、話しかけられた時だけ答える感じにしよう? 自分から話すの禁止!」


「そうね……たしかにそうするべきね。そういうところをシルヴァ様にも昨夜怒られたのだし。でも……どうしたら私、人に話しかけてもらえるかしら……小さい頃からなぜか人には遠巻きにされてばかりなの、私」


荘厳そうごんな感じがダメなのかもね。もっと話しかけやすい雰囲気をつくろうよ。お姉さんもっとバカっぽく笑ってみたら? にこー! って」


「バカっぽく笑う……? こうかしら……に、にこー……」

 ミリアの笑顔は堅かった。

 育ちの良さがじゃましているようだ。


「違うよ! もっと屈託ない感じで、にこー! って」


「に、にこー……!」


「全然だめだよ、もう一回!」


「うぅ……今日の子羊さんたら、なんだかとっても厳しいわ……」 

 

 ミリアは泣き言を吐いたりもしたが、笑顔の練習を続けた。


 まじめな上に忍耐力の強いミリアは決してへこたれなかった。 



 ――そして三日後。


「どうかしら子羊さん、わたしの笑顔は!」

 

 ミリアの顔には、とても感じの良い笑顔があった。


「うん、すっごくいいと思う!」


 これまでの慈愛溢れる笑みも悪くはなかったのだが、なんというか、神聖な感じがしすぎて近寄り難かったのだ。


 今は、話しかけたくなるような暖かさがある。


「ねえ子羊さん、私この笑顔を浮かべていれば人に話しかけてもらえるかしら? クィーラ教を布教しやすくなるかしら?」


「うーん……」

 俺は改めてミリアの全身を眺めてみる。

 

 まだ、いまいち話しかけにくい。 


 なんかキッチリしすぎてるのだ。


 神官服がいけないのだろう。


 ずいぶんと質のいい生地でつくられた純白の聖衣。

 上下一体のそれは、ミリアの肌を全身隙なく隠している。


 所々に入った刺繍もいかめしい。


「そうだ! ねえお姉さん、ちバサミ持ってる?」


「? ええ、あるけど……」


 俺はミリアにハサミを持ってこさせた。


「じゃあ切るね。危ないから動かないでよ」


「え……!? ちょっと子羊さん、あなた一体なにを!?」


 戸惑うミリアにかまわず、俺はミリアの神官服のスカート部分にハサミを入れた。


 裾から足の付け根にむかって立てに切り裂き、神官服に深いスリットをつくる。


「し、神聖な神官服になんてことを……! 子羊さん、あなたはなんて悪い子なの……そこにお直りなさいな! お説教ですからね!」


 俺を叱りつけながらも、スリットをもじもじと手で押さえるミリア。

 その顔は真っ赤に染まっていた。


 俺は得意げに笑って言う。

「そうやってスリット入れると、お姉さん恥ずかしくてもじもじするでしょ。かわいくて話しかけやすいよ。それに、その格好だとお姉さん恥ずかしくてあんまり自分から話せなくなるでしょ? 一石二鳥じゃない」


「で、でも……こんな、伝統を汚すようなこと……」


「でも昨日光臨した聖人さんには、柔軟に色々変えてもいいって言われたんだよね? だったら神官服のデザインだって変えてもいいはずじゃない」


「そ、そうだけど……でも、これは……」


「そうだお姉さん、いっそパンツも脱ぎなよ!」

 俺は思い立って言った。


「パ、パンツ……? ど、どうして私がパンツを脱がなくてはいけないの!」


「だってパンツ脱げば、お姉さんもっと恥ずかしくなってもっともじもじするでしょ? そしたら相手はお姉さんに話しかけやすいし、お姉さんは自分が話すどころじゃなくなるし――うん、布教にうってつけだよ」


「い、いくら布教のためとはいえ、パンツもはかずにお外を出歩くなんて……! できないわ、そんな! 私はそんなはしたない女ではないの!」


「へえ。お姉さんの布教に対する思いってその程度なんだ。がっかりだよ」

 俺は冷たい口調で言った。


「そ、そういうわけじゃ……だって、パンツを脱ぐのはいくらなんでも……」


「ううん、やりすぎなんてことはないよ。恥ずかしいから脱げないだなんて、お姉さんのクィーラ様への愛はそんなものなの? 本当にクィーラ様を愛しているならお姉さんはパンツを脱ぐべきだ!!」


 俺が問いつめると、ミリアはハッと目を見開いた。

「あぁ……たしかにそうだわ。クィーラ様への愛より自分の羞恥心を優先するなんて間違っている。子羊さんの言うとおり。――私脱ぐわ!!」


「あ、じゃあ僕が脱がせてあげるね」

 俺はミリアのスリットに両手を手を差し込んだ。


「え……ちょ、ちょっと子羊さん……やぁんッ! ……ど、どこ触ってるの……!」


 どさくさに紛れてミリアの大事な部分を触ったりしながら、俺はパンツの縁をつかんだ。


 あえてゆっくりゆっくり、ミリアのパンツをずり下げていく。


 股間が露わになっていく。


おお、ミリア……この歳でツルツルだ。


「うぅ……恥ずかしいけど、これは布教のため……クィーラ様のためなの……」

 ミリアはぎゅっと目をつむり、パンツを脱がされる羞恥心に耐えていた。


 もはや布教がどうとか全然関係なくなっていることには気づいていないようである。


 ついにパンツを脚から抜いたミリアは、スリットから大事な場所が見えないか不安でたまらないようで、もじもじしていた。


 最初の頃の、あのオーラに満ちた感じはすっかりなくなっていた。


「ねえ子羊さん……私、……変われているかしら……?」


「うん! お姉さんはやっぱりすごいよ!!」


「そ、そうかしら? ありがとう子羊さん。あなたのおかげよ!」



 ああ、バカな女の子で遊ぶのって楽しい。



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