地球からきた転生者の殺し方=ハーレム要員の女の子を寝盗っていきます
三浦裕
プロローグ 地球人は地球人に殺らせることにしました
「ほんっっと迷惑しとるんじゃ地球からの転生者どもには!! なんなのあいつら、別の世界に迷惑かけちゃいけませんて小さいころに習わんかったの!?」
オークの女王オ・ルナは、城の居室の床をドンドン叩いて怒りをあらわにしていた。
深夜の王宮に、女王の叫び声と床ドンの音が響き渡る。
うるせえな、と俺は耳をふさいだ。
「おいルナ、落着け。深夜に迷惑だろ。召使いのみなさんも心配してるぞ」
女王の居室に集ったレッサーオークのメイドたちは、面白いようにおろおろしており、NPCみたいに部屋を歩き回っている。うっとおしいな……。
しかし女王ルナは心配する部下にかまわず、どんどんヒートアップしていく。
ルナはエルフによく似た美貌をゆがめ、「地球人まじ許さん……ぜってー殺す……まじ殺す……」と呪いの言葉を吐き続けている。
相当地球人にむかついているようで、どんな言葉も耳に入らない状態のようだ。
まあ、怒るのも無理はない。
つい先ほど、シーラ山ふもとのオークの
地球からきた転生者の手によって。
地球人はおもしろ半分にこういうことをするのだ。
転生するとき女神からもらったチートな力をいたずらに振り回す。
この世界のデミ・ヒューマンを『魔物』呼ばわりし、いじめて回る。
今回は幸い死傷者は出なかったのだが、損害はかなり大きいだろう。
深夜にぐっすり寝てたところを叩き起こされ、砦陥落の報を受けた女王ルナは、猛り狂って居室のものを手当たり次第に破壊した。
そして獣のような
別室で寝ていた俺やメイドたちはその声に驚き、ここにつどったというわけだ。
**
「ちっきしょー……腹立つんじゃー……地球人まじむかつくんじゃー……オークならなにしてもいいってわけじゃないっちゅーに……」
朝方になってもまだ、ルナはぐずり続けていた。
「わかるわかる、すげーわかるー」
ベッドの脇に座る俺は、適当にあいづちをうって話を合わせる。
女が怒ってる時はとりあえず共感してやればいい、って昔誰かに教わった。
ちなみに、レッサーオークのメイドたちは、そこらの床で寝落ちしている。
主人の部屋で寝るとかほんとつかえねえなこいつら。
俺は「わかる、その怒りわかるー」と繰り返しながら、ルナの胸元に目をやっる。
ルナの寝巻の真っ白なネグリジェは胸元が空いており、たわわな双丘がけっこうぎりぎりのところまでのぞいている。
もう少し身をかがめてくれれば、先端が見えるのだが……――と。
「決めた!!」
ルナは突然ベットの上に立ち上がった。決意を固めるように、こぶしを固めるルナ。
「わらわ……この世界にきた地球からの転生者、全員ぶち殺すことに決めた!」
「全員? へえ。じゃあ俺も殺すのか?」
自己紹介が遅れたが、俺の名前はカトー・トモキ。
地球からの転生者だ。
地球で死んだ俺は、女神さまにとあるユニークスキルをもらい、チート状態でこの世界に転生してきた。
俺の種族はヒューマン――つまり普通の人間だが、わけあって現在はオークの女王オ・ルナの居城に客人として滞在している。
地球からの転生者は普通、オークにとっては天敵なのだが、俺とルナはいろいろ苦楽を共にしたので仲がいい。
「カトーよ、そなたは地球人とはいえ我が友じゃ! お前だけは殺さんよ。ああ、わらわとそなたは対等じゃ」
どうやらルナは、親友である俺だけは殺意の対象から除外してくれるらしい。
よかった。これでもうしばらく、このエロいオークの女王様と仲良くしていられる。
「ところでカトーよ、友のそなたに一つお願いなんじゃが……」
ルナは両手の人差し指を合わせて、もじもじと体をよじる。
「わらわのかわりに地球人ぶっころしてくれんか……? 地球人みんなつえーからのう。わらわじゃ勝てんのよ。同じ地球人のそなたじゃないと……」
友の願いとはいえ、なんで同じ地球出身者を俺が殺さなきゃいけないんだ、ふざけるな!
俺はカッとなって思わず怒鳴りそうになり――いや待てよ。
ここで、こいつに言うことを聞いてやれば――あれが、手に入り安くなるのでは?
「いいぞ」
俺が即答すると、ルナは喜色満面、ぴょんと飛び跳ねた。
「まじか!? 言ってみるもんじゃのう! 最っっ高!! カトー最高!! ヒュー!かっくいー! そなた今一番輝いてるよ!」
「ただし」と俺は続けた。「条件がある」
「じょ、条件……?」
「ああ。俺は同胞の地球からの転生者を、お前のために殺ってやる。その対価として――ルナ、お前の体を好きにさせてくれ」
俺は、ずっとルナが欲しかった。
だって超エロいんだもんこいつ。
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