世界を滅ぼす彼と使用人の私が契約結婚をするわけ

イガリー

第1話 世界が変わった瞬間を書き残すのなら

 

 自分の世界が変わった瞬間というものはたいていの場合、後になって気づくものだと思う。


『今になって思えば、あの時がきっかけだったな』という風に。


 例えば、両親が死んで教会に引き取られた時。

 例えば、教会からローズモンネ伯爵家に売られ、メイドとして働くことになった時。

 例えば、首に剣を突き付けられながら提案された、とある男の求婚を受け入れた時。


 私の世界は今も目まぐるしく変わり続けている。


「モル。小説なんて書いている場合ではありません。早くこれを見てください。廃墟になった神殿で拾った古代遺物を叩き壊してみたら、封印されていた邪神が解き放たれました」

「はい?」

「言い伝えによると、このままでは後7日で世界が滅びてしまいます」


 最近は主にこの男によって、私の日常は波乱に満ちたものとなっている。


「なんで壊しちゃうかな~?! これ、いかにもな封印魔術が掛ってたやつじゃん。明らか壊したらダメなやつ!」

「なんか、ムラムラしてしまって……」

「どんな理由だ! 王国を守る騎士のくせに、世界の危機作ってんじゃないよ!!」

「元、騎士ですよ。今は一介の冒険者です。それにオレが世界や王都を壊滅の危機に追いやるなんて、いつものことじゃあないですか。そろそろ慣れてください。そして、いつものようにオレと世界を救いましょう」

「諸悪の根源が開き直るな!!」


 これはこの男ヴァレルとその嫁である私、モルが世界を救う……いや違うな、主にヴァレルが壊しかけてそれを食い止めに走り回る、私の話だ。



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