第48話 みんな気の毒

 岐阜羽島を過ぎた辺りで席から立ち上がった。母さんに杖を持ってもらって、姉ちゃんに腕を持たれながらどうにか乗り口に行くことが出来て、名古屋に着いたのはすぐだった。


 在来線で金山まで行くことが出来たが、タクシーで会場に向かった。

 センチュリーに行っても近くには何もないが、建物の中のベンチは松葉杖効果か譲ってくれる人もいた。


「全国大会ってすごいな。ほとんどファンとか関係者やろ」


 朝の九時、ちょうど始まる頃だ。

 進行表通りにいくと、搬入はんにゅうが十一時半。十二時前に受付をして音出しがとリハが十三時半から十四時半に本番だ。僕が入るのは音出しからだ。


「外出て来る」


「私も一緒に行くわ」

 母さんの申し出に首を振って、リハーサルだと言って、何か大きな像の方へ向かった。外に出ると人がいっぱいだった。


 作曲家の先生も来ているらしく。ざわざわしている。まるでお祭りやな、うろうろとしながら歩いていると疲れてしまった。


 浴びることの無いブラボーを言うおじさんもいるのかな、みんな気の毒だな。初出場なのにさらされて、時間あるけどどうしよ。

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