第41話 五分の苦悩
高校は休学することになった。
その間、リハビリと高校の教材と参考書での勉強に専念した。
母と姉に「本ばかりではつまらない。せめて人と話をさせろ」と、訴え。
吹奏楽部員の面々とビデオ通話をする権利を得た。
もう退院していいのではと主治医に聞くと、「トイレと売店に行けても外が大変なのは伊坂さんがご存知では」と、何も言えなかった。
権利の行使に母さんは歓迎し、姉は嫌な顔をした。
年も明け、おせちも食べた。お雑煮も食べた。
「今日は何した?」
こちらが聞くと画面から初詣になり、春のコンサートになり、期末試験になり、春休みになり、入学式になり、部活動見学になった。
一年生と会いますかと言われたが、刺激が強いのでやめておくと答えておいた。この間、誰に対しても松山のことを聞けなかった。
大会シーズンになって大阪北地区大会を突破した頃になっても五分歩くのがやっとだった。
「吹奏楽やってたん。何やってたん?」
「窓磨いてました。あとはトイレ洗ったり」
「変なの」
リハビリの先生はゆかいそうに笑っている。
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