第9話 初めての挫折

 泣くとかそういうことでは無かった。

 茫然自失ぼうぜんじしつ。まさか、おかしいよな。間違いだよ。絶対。


 

「光、頬つまんでくれ」

「アホか」


 アホか現実に決まってるやろ。現実や、ほとんどの生徒がここで終わりや。

 先生がなんか言ったかもしれないけど、受け止めることの出来ない空気が漂っている。


 バスで学校に帰り、降りるとぺたんと座り込み泣き出す生徒が十数人。なんとか長はねぎらうこともせず、さっさと校舎へ帰った。

 誰も「泣いてないではよ音楽室に帰れ」とは言わなかった。

 それでも何とか立ち上がって、音楽室に戻ると熱くコンクールメンバーを抱きしめるマーチングメンバー。


「えらい冷静やな」

 部長の言葉は鋭利えいりではなく冷静なものだったので、皮肉ではないらしい。


「そんなことないですよ」


「終わったわ」


「まだマーチングが」


「うち国公立しか無理やから受験勉強せんと間に合わない。頼んだで雑務係」

 肩を力いっぱい叩かれた。


 マーチングメンバーは気合が入った。絶対に他の部員と共に心で全国に行く。みんなでそうちかった。

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