第5話 はよ行け

「じゃ、いくぞ、いくからな。ええか、いくで」

 はよ、行け。

 音楽室から聞こえるサウンドと監督の声、本日はなんと外部講師四人。常勤の顧問が二人、監督と僕込みで八人。



 お弁当買いに松山という後輩をつけてくれた。松山有希、よく知らないが楽器を吹くと指が震えるそうだ。


「こんな暑くて若くもないのによく揚げもん食えますよね」


「ま、胃袋が若いにこしたことないやろ」


「のり弁に変更させて差額でアイス食べません」


「そんなことしたら、あとでえらい目遭うわ。めんどい」


「冗談です。でもコンビニの風に当たるくらいええでしょ」


「お茶を買いに行った大義名分であるなら許す」



 コンビニに二十分いたら怒られた。お茶を買いに行くといったのになぜか松山が百円アイスを持っていたからだ。


「暑かったので、手間賃てまちんです」

 坂下先生は松山からレシートを受けとり、お弁当購入予算袋に百円をいれていた。


「さすがに食うところが無いので他のメンバーと食堂に行ってくれ。冷やしておくから」


 合奏も終わり、それぞれが弁当を買いに走ったが、僕たちはごちそうしてもらったお弁当を食べ、冷房の幸せを甘受かんじゅした。

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