第12話 お姫様のお城


さわやかな朝 


窓からはやさしい光が差し込みます。


小鳥のさえずる声で目が覚め・・・



うそです。 母にたたき起こされました。



寝付くのが遅くてなかなか目が覚めなかったんです。


おふとんさんが行っちゃダメって駄々をこねるんです。私は悪くありません。



いけません。今日はあかねさんからのご招待


気合を入れて用意しなければっ



――――



アドバイス通り 背伸びしないように気を付けます。


聖女ちゃん達と遊びに行くときの雰囲気でいつもの私を目指すんです。


清潔に可愛く これが一番です。



でもリップは色付きにしてみました。ちょっとだけ特別です。


髪もしっかりとブラッシング ゆっくりと100回


聖女ちゃんはこれを毎日しているんだよね。あの髪は努力したから綺麗なんです。



私には完璧美少女は無理かもしれないけど、可愛い女の子くらいにはなりたいのです。


『あかねさんと一緒に居られる女の子』


コツコツ努力します。




最後の仕上げ トテちゃんから教えてもらったおまじない


鏡に向かってにっこり笑顔


『きょうの私 かわいいよ』



なんだか落ち着いてきました。


トテちゃんありがとう 今度なでなでしてあげるからね。



――――



「もうすぐ着くよ」


母の声で慌てて目を開けます。



家を出発してすぐに眠ってしまったようです。


でもこれで寝不足解消 すっきりした気分です。



「ここで良いのよね あかねさんのお家」


きょろきょろと不安げな母


目の前にはこのあたりで一番高い建物 タワーマンションというヤツではないかと



玄関前にそのまま車で入ってくださいと言われていた母


歩くような速度でそろそろと  入っても怒られませんよね。


小心者の社長夫人と社長令嬢です。



玄関前の屋根の下でそっと車を止めます。 



ここからどうすれば・・・



あっ あかねさん



玄関が開いてあかねさんが迎えに来てくれました。


スリムタイプのパンツにふわっとしたシャツ 脚長いです。


モデルさんの普段着ってきっとこんな感じですよ。




慌てて車から降りてご挨拶


「今日はありがとうございます。一日お世話になりますね」


お土産付きで母の挨拶 ちょっと良い紅茶のセットを持ってきました。



「こちらこそ しおんちゃんをお借りしますね」


いつでも貸し出ししますよ。むしろそのまま貰っちゃってください。



「この子 うれしくて夜遅くまで騒いでたのよ 今朝なんか・・・」わぁぁぁ そこまでぇ


お母さま お帰りはあちらです。 早くおかえりください。お見送りごくろうさまでした。



「帰りはお宅まで送りますので安心してください」


あかねさんに送ってもらえるのですか うれしいです。



「迷惑かけないように わかってるわね」


迷惑かけないですよ あかねさんですよ



――――



「さあ お部屋行っこか」


母を見送ってからあかねさんについて行きます。



二重の自動ドアが開くと広くて静かな場所


豪華なソファーも置いてあって音楽が流れています。



受付もありますよ。スーツを着たおじさまがいます。


まるでホテルのロビーみたい



あかねさんは受付しないみたいです。私は軽くおじぎで挨拶


おじさま にっこりしてくれました。



奥にあるエレベータに一緒に乗って あかねさんが手をかざすとピッと音がして動き始めました。

押してないのに15階のボタンが光っています。


お家は15階みたいです。



手をかざしただけだよね。触ってもないし何も持ってないし・・・ 謎です。



いつの間にか到着したみたいでエレベータの扉が開くとまたホテルみたい


絵が飾ってありますよ。見たことある絵だけど誰のだっけ



廊下を歩いて一番奥のとびら 


とびらの前の黒い板 手をかざすとカチャっとロック解除


このマンションは魔法が使えないと入れないみたいです。



おじゃまします。



――――



「ようこそ わたしの部屋へ」


 

大きな部屋です。ここがリビングかな。


低いガラスのテーブルに白っぽいソファー

お部屋が白く感じます。


壁にはどぉんと大きなテレビ こんな大きさのテレビ初めて見ます。



そして正面には広い窓 壁が全部窓 ながめが最高です。私の家見えるかな



「しおんちゃんのお家はあの辺かな」


家がいっぱいでわかりませんね。あまり目立つ建物がないです。



右の奥の方 ちょっと緑が多い丘になっています。

一番高いところに大きな木


聖女ちゃんのお家の方向ですね。トテちゃんのお家も近くのはず



「夜になるともっと綺麗だよ」


わぁ 綺麗だろうなぁ でも遅くまでお邪魔すると母に叱られそうです。残念



「今度は夜景も見ようね」


誘ってもらえました。嬉しいです。あかねさんとイチャイチャしながら夜景を見るのです。

約束ですよ。またここにお邪魔できる理由が出来ました。



――――



夢中になっていて大事なことを忘れていました。母にも怒られてしまいます。



ご両親にあいさつしたいです。いらっしゃいますか



「気を遣わなくて良いからね。それにここは私の部屋 両親は本宅に住んでるよ」



独り暮らしなんですね。でもひとりでこんなに広いお部屋なんてすごくないですか


それに本宅ってなんですか 


やっぱりあかねさん お嬢様ですよね。



「それはないしょのひみつです」


またごまかされました。


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