湖の月明かり

篝火

鏡合わせの表と裏

それは、あの日出会った時から決まっていたのだろうか?

少年と少女のひと時の逢瀬……

敵対する者同士の運命的なイタズラ……


──side少女──

私と彼の出会いは、湖のほとりであった。

彼は、敵国の少年で偶然にも湖にたどり着いた者……

私たちが出会ったのは満月の綺麗な夜だった……

私はその夜、寝むれなさに湖の周りを散歩する事で気分を落ち着かせようとしたが、その途中で彼と出会ってしまった。


──side少年──

ボクが彼女と満月の夜に出会ってしまった。

綺麗な金髪の美しい少女……

知り合いが一人また一人と亡くなる中で、ボクは彼女に出会ってしまった。

「……こんばんは……美しい人……」

なぜか自然とその言葉が出てきた……少女は、目を見開き固まっている。

なんで美しい人なのか、ボクはそんな彼女に見惚れていた──


──side少女──

『……こんばんは……美しい人……』

その言葉にすぐには反応出来なかった。

少年のその表情が、どこか寂しげに感じられたからだ。

ナゼか少年から目が離せない。

何時間も見つめ合ったように私と彼の時は止まっていた。

そして、彼が一歩こちらに近づいてこようとした時、気づいたら……私は走って逃げていた……

彼に何も言えないまま……


──side少年──

少女は、走って行ってしまった。

ボクが一歩、彼女に近づこうとして足を前に出したら、彼女は走って行ってしまった。

「もう一度、彼女に会いたいな……」

誰に聞かれることのないその言葉は、風とともに空に消えていく。


──side少女──

私は彼の顔が頭から離れなかった。

その夜も同じように湖のほとりを歩いていた時、また彼と出会ってしまった……

彼は、昨日と同じように静かに湖を眺めていた。

私は黙って彼に近づいた──


──side少年──

今日も彼女が来てくれた、ボクは湖を眺めながらチラッと彼女を横目で眺めて、彼女が近づいてくることに気付かないフリをしていた。

彼女が数歩の距離まで近づいた時に、昨日と同じようにボクから彼女に話しかけた。

「こんばんは……また会ったね。」

言いながら、彼女の方に顔を向けると彼女は目を大きく見開いて、驚いた顔を向けてくる。

その表情はカワイイと思ったのは、ボクだけの秘密だ。


──side少女──

『こんばんは……また会ったね。』

少年から突然声をかけられて、私は驚いた。

私は彼の死角から近づこうとして歩みよっていたのに、気付かれたからだ。

驚いてまた言葉を返せなかった……

そんな私に彼は顔を向けて微笑んだ。

私は少し落ち着くことができ、彼に話しかけることにした。

「こんばんは……」

そして、静かに湖を共に眺めることになった。

共に眺めながら、私は彼の顔を横目で見る……そして、目が合った──


──side少年──

ボクは共に湖を眺める彼女の事を横目で見る……そして、彼女と目が合った。

いつの間にか、視線だけではなく顔ごと彼女の方を向いていた──彼女も顔ごとボクの方を向いていた。

お互いに永遠にも感じられる時間を見つめ合う 。

「キレイだ……」

自然とこぼれたその言葉に、彼女の顔が慌てたように真っ赤に染まる。


──side少女──

『キレイだ……』

その言葉で私の顔が熱くなってしまった。

「私、もう行くわ!また会いましょう!」

目も合わせれなくなって、捲し立てるようにその場を後にするのだった。

彼は『またね』と言って笑ってくれた、チラッと見えた、その表情と言葉に私は寝付けなかったのはココだけの秘密だ。


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あの出会いの日から、何度も逢瀬を重ねる内に私たちは、魔法に当てられたようにお互いに恋心を抱いたのであった。

「ボクは君のことが……好きです!」

「……わ……私も……好きです!」

その言葉と共に湖のほとりで、唇を重ね合わせる私たちなのである──


それは、結ばれない悲しい運命さだめを背負いし少年少女の小さな恋物語。

水面に映る月を掴むような一筋の幻想

そんな二人の恋を月明かりが優しく照らす。


               (完)

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