その4 試される頭脳。

♪スットコボンボンスットコボンボンスットコボンボンボン!ア~リラ~、ホリラメッサノイリンゴトゥリマッセ~~~



謎の音楽が大音量で流れる中、私は考えた。

トイレのドアが開くとしたら、1もしくは3になるはずだ。

最も頻繁に使うのが1だと考えるのが自然、そしてそれは、ドアの開閉...だよね?たぶん。


別の発想をしてみよう。


拭く物が見当たらないのだから、1→2→3の順に、トイレのあれこれが解決するようになっている...。

そういう考え方をするなら、ドアの開閉は3になる。


ならば!


安全なのは‘2’だ!!




...やっぱりイケモトに聞こう。



運悪くドアオープンしてしまったなら、私はもう、イケモトの顔をまともに見られないよ。

もし本当に結婚をお考えなら、これ含めて全てをご覧いただくべき、という考えもあるかとは思いますがね、いくらなんでもね、今のね、この状況はね、悲し過ぎますので...。


意を決して、ドア越しにイケモトを呼ぼうとした。



♪アイ!アイ!アイアイアイ!アレアレ!アレアレ!アレアレアレアレアレ!



うるせえ。

2周目に突入した‘音1’が、私の普通の声量を上回っている。

これだと、かなり叫ばないとイケモトに私の声が届かない。

逆もそう、だよね。


「かーみーがあーりまーせーん!!」「どーうーしーまーしーたーかー!?」って、室内で絶叫する男女...なんなんだ、それ。


とりあえず音を消すか、と考えてリモコンを見た。

‘止’のボタンが無い。




....。




3択、やるか。



‘開2’



遥奏は 願いをこめて リモコンのスイッチを 押した!



ウィーーン、シュー、プルルルルルルル。



便器の中から音がした。

なんだか聞いた事があるそれに近い。

そして、何かが出て来た気がした。




シュワーーーーーー!




ビデかよ...。


開2の正体が判明した。


となると、1は、おしり?

3は風乾燥かな?


続けて、‘開3’を押してみた。



すると...



スーッと、右側の壁の一部が開いた。

その中には、布のような紙のような物が、積み重ねて置いてあった。



...これが、正解...かな。



それの一番上を手にして、拭...



シュワーーー!!



出たら出っぱなしかよ!

‘止’のボタン無いのにどうするのよ!?



...ん?



プリティな遥奏は突如として閃いた。

「同じボタンをもう1回押せばいいんじゃね?」、と。



ウィーーーシュゴゴゴゴゴゴゴ...。



音を立てて、ノズルは便器の中へと帰って行った。



スットコボンボンスッ...。



騒音でしかなかった音1も、沈黙。



はぁ...。


全てが解決した気がした。


手にした柔らかい布のような紙で、拭くべきものを拭いた。

材質が何かわからないそれは、フワッと柔らかく、優しく包まれるような感触だった。

使用後、何も考えずに便器の中に流してから、「流してもいいのかな、これ?」と頭に浮かんだけれど、ダメだったとしても後の祭りというやつだ。


今日1日で、ピンチは何回あっただろうか?

その中での最大のものを、くぐり抜けた気がした。



そして...



「手はどこで洗うんだろう?」



また新たな壁にぶつかった。

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