ジェットコースターに乗る

 乗るんだね。そう来なきゃ! だって肝試しに来たんだもの。いろいろ試さないとね。


 老朽化でボロボロだけど、どう? 座り心地は? なにか霊的なものを感じたりしない? 安全バーを下げてみる? あ、触っただけで勝手に下がっちゃった。私は何もしていないよ。勝手に下がったんだよ。え? 上がらない? 錆びているからかな?



 ゴォーン



 あれ、これは発車の合図だね。変だな。ここは電気が通っていないはずなのに。不具合かな?


 あ、コースターが動き出したよ。ごめんね。私には君を助けられないみたいだ。でも君は今、貴重な体験をしているんだ。もし、ここに戻って来られたら、体験したことを聞かせてよ。



 ◇ ◇ ◇



 あなたはひとりでジェットコースターに乗ってしまった。あなたを見送る人物は手を振りながら笑っている。


 どうにか安全バーが外せないか何度も上に持ち上げようとしたが、ビクリともしない。コースターはゆっくりと上昇する。あなたは諦めた。もう、どうにでもなれと。


 このまま成り行きに任せよう。


 コースターが頂上にたどり着くと、一気に急降下した。顔に風があたる。錆びたレールがギーギーと音を立てて高速で走る。急カーブで体が投げ出されそうになりながら、あなたは耐える。


 あなたは妙な感覚に襲われた。あなたはひとりでコースターの乗っているはずだ。それなのに気配がする。


 横を見ると、おじいさんが隣に座っていた。よく見ると他の席にも人が座っている。皆うつろな目をしていた。


 コースターはラストスパートに向かっていく。その先はレールが錆びてなくなっている。あなたは安全バーを必死に握りしめた。


 その時


「手を離せ! 手を離せ!」


 あなた以外の人たちが口をそろえてそんなことをいう。さあ、どうする?



 『安全バーから手を離す』

https://kakuyomu.jp/works/16817330663384580032/episodes/16817330663388411563



 『絶対に離さない』

https://kakuyomu.jp/works/16817330663384580032/episodes/16817330663388824937

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