「落ちろ」

蒼朔とーち

「落ちろ」

「落ちろ」

針のような雨だった。

悴んだ手に、歩くたび濡れる体。

寒さに悴んだ手指が、針に刺されたように痺れていた。


落ちろ。

落ちろ落ちろ。

道ゆく人も、店の看板も、頭上に走る高速道路も、……あいつも。

全部落ちてしまえ。

そうすれば、ぐちゃぐちゃになった世界の中で、私だけが原型をとどめて、笑っていられる。

大変でしたねって笑いかけてあげられる。

手を貸しましょうかって助けてあげられる。

全部、全部。


上から目線の代物だから。

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「落ちろ」 蒼朔とーち @torchi_1

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