窃盗

成瀬先輩は言った。


「俺の時も……おまえだったんだろ?」


相沢はうなだれ、言葉をなくしていた。


俺と先輩は、相沢を連れて署に向かった。


俺のカバンには相沢の指紋が付いているかもしれないので、証拠保全のため、そのままにしておいた。

まぁ、こんなことになると思って、携帯や部屋の鍵は、あらかじめカバンから出しておいたのだが。


相沢巡査長は、窃盗罪で事情聴取された。

盗んだ物は、俺の

俺がトイレに行っている間に、カバンから俺の警察手帳を抜き取ったのだった。


数年前、成瀬先輩が昇任試験に落ちたと聞いて意外だったのだが、ある事情を知って驚いた。

なんと、成瀬先輩は警察手帳を紛失し、懲戒処分を受けていたのだった。


相沢と組むと試験に落ちるというのはジンクスではなくて、相沢が裏で何かをやっているからではないか。

そう思った俺は、あえて相沢とバディを組むことを上司にお願いしたのだった。

いつか、相沢のしっぽを捕まえてやる。俺はその機会を虎視眈々と狙っていた。


相沢は、俺のカバンに警察手帳が入っていることを知っている。

今日の勉強会は、いわば「おとり捜査」であった。

相沢は、それに引っかかったというわけだ。



事情聴取の中で、相沢は犯行の動機を語った。

それは、予想通りのものであった。

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